« 信濃町探偵団―創価学会最新動向 2007/3/15 | メイン | 信濃町探偵団―創価学会最新動向 2007/4/1 »

2007年03月15日

特集/衆院・予算委の亀井質問を読み解く

安倍・池田会談の事実を追及 亀井静香議員の国会質問

ジャーナリスト 段 勲

 かつては創価学会・公明党研究のエキスパート

 第166回通常国会・衆議院予算委員会(2月13日)に、国民新党の亀井静香議員が質問に立った。自民党時代、運輸大臣も務めたことがある亀井議員は、創価学会の政治活動について、古くから疑問を呈してきた国会議員。かつては国会に、池田大作・名誉会長の録音テープを持ち込み、例の“デェジン発言”を公開した議員でもある。
 あるいは、選挙期間中、公益法人である創価学会の選挙活動に強い不信感を抱き、元警察官僚だった人脈と調査能力を生かし、同会の選挙活動ぶり等を徹底して調査した形跡もあった。
 とくに公明党が新進党に参加し政権を握って以来、自民党内では「創価学会・公明党」研究のエキスパートとして台頭。当時、筆者も何度かインタビューしているが、「政教分離」を問題視する並々ならぬその「決意表明」は、いまだ耳朶に残されている。
 当然、創価学会にとって亀井議員は宿敵となった。ところが周知の通り、新進党が崩壊。自民党は公明党と連立を組んで政権与党になり、さらに亀井議員は小泉内閣時代、郵政民営化をめぐり、自民党から追い出された格好で国民新党を結成した。
 このあたりから“国会の元気男”亀井議員の影が薄れ、表舞台に出る回数もめっきり減った。その最中の衆議院予算委員会の質問である。いまや、小世帯の政党所属とはいえ、どんな質問が飛び出すのか、やはり学会や公明党にとっては、気になる存在であったらしい。
 与えられた質問時間は50分。まず、安倍総理を前にして、
 「総理、あなたに野党の立場で質問することになろうとは私は夢にも思わなかった」
 と、口を開いた亀井議員は、まさに、衆議院予算委員会を舞台にした独演会の様相。総理の答弁など、もとから期待していないようで、一方的に目下の国政、経済問題等を分析しながら、現今の国策を批判した。
 「総理、簡単に言うと、機関車と後ろの客車が切り離されちゃった。連結器が壊れちゃっている。機関車だけ、たたたっと行っちゃった。客車だけ取り残されているんですよ。そういう日本の経済がうまくいくはずがない。やはり総理、ここで、過去にとらわれないで、現実をしっかり見つめて、それに即した経済政策、社会政策をやっていただきたいと私は思います」
 等、語り、質問時間の後半に入ってから、「創価学会・公明党」問題に触れた。亀井議員の得意とする分野である。

 公明党に自民党は吸収合併されたらいいんだ

 創価学会と公明党、自民党、政府の関係がおかしいとし、そのおかしさぶりをこう羅列する。
 「創価学会員は、平和を願い、庶民の生活を守ってほしい」という宗教団体なのに、「イラクの戦争を支持している」また「庶民への負担増を、あっという間に自民党に同調して、支持している」。
 「教育基本法については、あらゆる宗教団体、圧倒的な声を、これを無視しちゃって、創価学会のおっしゃるとおりの教育基本法を強行採決までやってつくった」
 自民党と、公明党の選挙協力にも言及し、選挙で公明党、創価学会に丸がかえされながら、
 「総理、選挙協力と称して、自民党が候補者を出しているところに、出していないところなら別ですよ。出している比例区に公明党、公明党と言う。……今度の選挙でまたやるんですか、それを。我々野党は選挙協力しますよ。しかし、自分の党が候補者を出しているところに、よその党を応援してくれなんて、そんな破廉恥なことはようやりませんよ。……政党政治の堕落じゃないんですか」
 そして、こう結ぶ。
 「これはまさに政党政治の自滅だと思う。……もう公明党に自民党は吸収合併されたらいいんだ」
 質問に、創価学会、公明党の話が頻繁に出てきたためか、大臣席に座る公明党の冬柴国土交通大臣も黙ってはいられない。ほぼ強引に立ってこう答弁した。
 「先ほど来、公明党が何か国家を壟断しているような趣旨の話までされましたけれども、とんでもない話ですよ。……
 そして、イラク戦争を是認したではないかと。私は、イラクの人道復興支援のために一生懸命自衛隊にやっていただいたわけでありまして、平和の問題であります」
 先の「教育基本法」問題についても、ひと頃の亀井議員だったら、もう少し切り込んだはずである。
 公明党が100%の支持、支援を受けている「創価学会」の最高指導者・池田大作氏は、教育基本法の改正については反対をし、その論文まである。なのになぜ公明党は、自民党に同調して同法案に賛成したのか。公明党は、池田氏を無視? 亀井議員には、このあたりも突っ込んでほしかったのである。
 また「イラク問題」について、亀井議員は「公明党が支持した」と質問した。冬柴大臣は、質問の主旨をすり替え、
 「人道復興支援を一生懸命にやってる」
 と、答弁している。「戦争」と「戦後処理」は違う。理由もなく、他国に爆弾を落として国土を破壊。火種を拡大させ、連日、無関係な国民がテロの犠牲者になり、わけもなく死んでいく渦中の人道復興支援? 復興を支援するくらいなら、先にその元凶を糺すのが道筋である。「庶民のため、平和のため」と標榜する政党である公明党は、命を張って「イラク戦争」を阻止したのか。

 「報道を否定」の首相に抗議をしない各紙

 「別に、私は冬柴大臣に答弁を求めたわけじゃありませんが……」
 と、かわした亀井議員は、質問が本題に入って、こう切り込む。
 「総理は、池田大作名誉会長に、あなたは去年の9月頃、お会いになりましたか。……
 お会いになっているということを読売も書き、毎日も書き、日本経済新聞も書いているでしょう。……総理は、いや、会ったことはないということを執拗に否定をしておられる。……創価学会と一国の総理の間に何かやましい関係があるんじゃないか、隠さにゃいかぬ関係があるんじゃないか、そういう疑心が生まれる危険性があると言っているんですよ」
 この質問に対し、安倍総理はこう答弁した。
 「池田名誉会長と私がお目にかかったかどうか。これは、もう既に委員会で申し上げておりますように、お目にかかったことはございません」
 と、きっぱりと否定。亀井議員はなおもこう畳みかけた。
 「一国の総理がうそを言っているのかもしれない……それは読売であろうが、毎日であろうが日経であろうが、あんなにでかく報道されちゃっておる、それについて間違いであるなら記事の訂正あるいは法的措置をやられたんですか」
 この質問に塩崎官房長官や安倍総理も、
 「内閣としては動いていない」、「法的手段に訴えることもしない」
 安倍総理と池田名誉会長が会った事実は、実際、各紙が報道し、読売などは、会談の内容まで克明に報じていたもの。
 安倍総理が「会ってない」と答弁したが、亀井議員の言う「ウソをついている」ことが事実なら、安倍総理は国会で偽証したことになる。
 一方、安倍総理の答弁が事実なら、読売、毎日等、大手マスコミは、会ったことも、会談内容まで勝手に捏造したことにはならないか。“伊藤律会見”ではあるまいし、今どきの新聞社が架空会見を揃って記事にするか。
 事実報道を使命とする報道機関にとって、一国の総理大臣から「捏造」と断定されては、これ以上の屈辱もない。1社でも、安倍総理大臣に厳重抗議をしたのか。――鶴タブーはまだ、依然として残されているのである。
 
 段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。近著の『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『鍵師の仕事』(小学館)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)『定ときみ江 「差別の病」を生きる』(九天社)など著書多数。

3月15日号 目次
閻魔帳 米アフリカ軍新設は中国封じ込めへの布石/太田述正
特集/衆院・予算委の亀井質問を読み解く
安倍・池田会談の事実を追及 亀井静香議員の国会質問/段 勲
衆院予算委での創価学会・公明党問題に関する亀井議員の質問全文/本誌編集部
特報 創価学会フランスが開陳する荒唐無稽なサイトの中身/広岡裕児
短期集中連載 創価学会党化した自民党(5) 詐術的・謀略的手段を平気で用いる自民党/白川勝彦

●連載 信濃町探偵団――創価学会最新動向
世之介の「つれづれなるまま」(60) 早蕨/金原亭世之介
日本見聞録(37) 築地から豊洲へ――東京都中央区築地/本郷 健
執筆者紹介 バックナンバー一覧 

編集後記から  
2月13日に行われた衆院予算委員会。亀井静香代議士と安倍首相の間でたたかわされた創価学会・公明党・池田大作氏に関する質疑を詳報した新聞・テレビはありませんでした。そこで宗教と政治・宗教と社会に関わる諸問題を報じることをモットーとする小誌は、予算委員会質疑のうち、創価学会・公明党・池田大作氏にかかわる部分を全文掲載した次第です。  
小誌既報のように国会では衆参ともに自・公が過半数を制し、その数の力にものを言わせて国会運営を仕切っていることから、創価学会に関する質疑は事実上、タブー扱いとなっています。  
そうした政治状況の中で、衆院予算委員会という国会でもっとも注目を浴びる表舞台で、創価学会なかんずく池田大作名誉会長と安倍首相の会談の有無や自・公の選挙協力の問題など、宗教と政治に関する極めてステディな事柄についての質疑が行われたことは注目に価します。  
しかし今回の亀井質問を契機に、国会で創価学会問題が取り上げられるようになるかと言えば、その期待はほとんどありません。同様に安倍・池田会談を報じた記事を、「虚偽」と断言されたにもかかわらず、その真偽を追及しようとしない全国紙の姿勢を見ても分かるように、全国紙やテレビが創価学会問題を取り上げることも、あまり期待はできません。  
それゆえに小誌は創価学会・公明党問題をはじめとする宗教と政治の事実と真実を報道し続けるのです。

投稿者 Forum21 : 2007年03月15日 22:11

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.forum21.jp/f21/mt-tb.cgi/75

inserted by FC2 system