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2008年06月05日

2008-6 特集/矢野絢也元公明党委員長が造反

矢野絢也元委員長造反の経緯と意味
真実を明かすことが責務

乙骨正生 ジャーナリスト

 くり返された人権蹂躙

 公明党の委員長・書記長を20余年にわたって務めた矢野絢也氏が、5月12日に東京地裁で記者会見し、同日付で宗教法人・創価学会と創価学会の最高幹部7名を被告として、名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を東京地裁に提訴するとともに、5月1日付で家族揃って創価学会を退会したことを明らかにした。
 矢野氏が創価学会を退会し、創価学会と創価学会の幹部7名を提訴したのは、「訴状」(別掲)に詳述されているように、創価学会ならびに創価学会幹部らが矢野氏の基本的人権を侵害する行為を繰り返したことに起因する。
 平成5年から6年にかけて月刊誌「文藝春秋」に連載した手記で、創価学会と公明党の関係を「政教一致といわれても仕方がない部分があった」と記載したことから、創価学会からの非難を受けるようになった矢野氏。「訴状」によると、その矢野氏に対する創価学会による攻撃が激化したのは平成17年のこと。具体的には創価学会や創価学会幹部らが、(1)政治評論家としての言論活動の中止強要、(2)機関紙や諸会合での誹謗中傷、(3)矢野氏の30年にわたる政治活動の軌跡を記録した手帳や資料の無理矢理の持ち去り、(4)威迫を伴う高額の寄付の強要など、矢野氏の人格や名誉、言論・表現の自由を侵害する人権侵害行為を繰り返したという。

 「訴状」には、青年部の最高幹部が、「土下座しろ」「評論家を辞める。今後は書かない」などと執拗に矢野氏を侮辱・威迫したことや、関西創価学会の最高幹部が巨額の寄付を強要したことなどが具体的に書かれているが、事実とすれば公益性を尊重される宗教法人として許されざる暴挙・蛮行である。
 また矢野氏と家族には、身元不詳のグループが恒常的な監視や尾行を行っており、矢野氏は身の危険を感じることも多々あったという。
 記者会見の席上、矢野氏は、国会議員として多年にわたって基本的人権の擁護に尽力した経緯から、こうした違法な人権蹂躙行為を黙視・放置することは責任放棄であり、人権蹂躙行為を阻止することが自らに課せられた責任だと主張。創価学会の誤った姿勢に唯々諾々と服従することや泣き寝入りをすることが、創価学会に対する「恩返し」にはならず、むしろこうした反社会的な行為を明らかにし阻止することこそ、創価学会やこれまで矢野氏を支持してくれた人々や社会への恩返しだと強調した。
 これに対して創価学会は、5月21日開催の本部幹部会の席上、原田稔会長が、矢野氏を「恩知らず」「臆病」「ウソつき」と激しく非難。矢野氏から提訴された被告の一人である谷川佳樹副会長も、5月20日、矢野氏の主張は「事実無根の虚偽」だとして、矢野氏と矢野氏の提訴を報じた「週刊新潮」を発行する新潮社と「週刊新潮」の早川清編集長を相手取り、名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。今後、法廷の場で、双方の激しいバトルが展開されることになる。

 創価・公明の実態を明白に

 ところで、矢野氏は、「訴状」において、これまで公明党の委員長・書記長として、「創価学会の要請に応じ、数多くの諸問題の解決のためにも誠心誠意尽力してきた」と記し、提訴後の「週刊新潮」「週刊現代」の取材にも、
 「創価学会を守るため様々な問題解決にも努力してきたつもりです」(「週刊新潮」5月22日号)
 「70年に創価学会と公明党による“言論出版妨害事件”があり、池田大作会長を国会に証人喚問せよと連日他党から責められました。私は公明党の書記長として、創価学会と池田先生をお守りするために事態の収拾にあたりました。あれから38年経ったいま、自分自身が当の創価学会から言論活動を妨害されているのだから、感慨無量ですよね」(「週刊現代」5月31日号)
 とコメントしている。矢野氏がここで言う「創価学会と池田先生をお守りするため」に行った行為には、例示された言論出版妨害事件のように、創価学会に批判的な人物・団体に対する人権侵害行為や反社会的行為が含まれている。
 矢野氏は記者会見の席上、創価学会による人権蹂躙行為を阻止することは、自らに課せられた責任だと発言した。そうであるならば、かつて「創価学会と池田先生をお守りするため」に関わったさまざまな事件・問題の真相を明らかにすることこそ、ここまで矢野氏を支持してきた人々や社会に対する責任を果たすことになろう。

 ちなみに矢野氏が、元公明党国会議員らによって無理矢理持ち去られたと主張する矢野氏の手帳には、(1)創共協定、(2)月刊ペン事件、(3)一億七千五百万円金庫事件、(4)創価学会への税務調査、(5)日蓮正宗との対立、などの内幕が詳細に記載されていたという。
 これらの問題をはじめ、公明党の委員長・書記長として、創価学会・公明党の裏・表に通じ、自らさまざまな事件の処理に関わってきた矢野氏が、創価学会と池田氏を守るために関わった政界工作の実態などを明らかにすることの意味は極めて大きい。なぜなら、いまや創価学会は、政権与党・公明党の母体として、日本の政界に大きな影響力を保持しており、その創価学会の実像・実態を明らかにすることは大きな社会的意味を持つからだ。しかも矢野氏は創価学会の政治的影響力の拡大に尽力した当事者。その意味でも、真実を明らかにする義務と責任がある。その義務と責任を矢野氏が果たすことを期待したい。
 それにしても竹入義勝元委員長・矢野元委員長と、公明党の二代にわたる委員長が、創価学会から相次ぎ造反した事実は、創価学会・公明党の異常な体質をあらためて浮き彫りにした。その矢野氏が創価学会を提訴した事実を「朝日」「読売」「毎日」の三大紙が報じなかったことは、創価学会の前に屈する日本の大手メディアのお粗末な姿勢を示唆している。

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』(かもがわ出版)など。

投稿者 Forum21 : 2008年06月05日 19:13

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