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2007年04月01日

特集/池田大作全集100巻・人間革命5000回礼讃の裏事情

全集100巻の刊行を可能にした、池田大作「多作」のからくり

フリーライター 岩城陽子

 信じられない驚異的な多作

 聖教新聞社に勤めている私の後輩が「池田先生は新聞に載る原稿だけでも1日10枚(400字詰原稿用紙)のペースで書かれているのよ」と得意そうに話してくれた。昭和3年1月生まれの池田大作さんは今年で79歳のご高齢の身の上、そんな多作に耐えられるスタミナがあるとは、にわかには信じられない。
 そこで3月に入ってから2週間分の聖教新聞にざっと目を通してみた。あるぞあるぞ、「池田先生」執筆の記事が……。『新・人間革命』は2週間で32枚ほどの分量だし、その他にも長編詩、協議会での講演、国際総会へのメッセージ、謝辞(代読)、幹部会の講演を合わせると、2週間で合計ざっと140枚ほどの分量になる。その意味では後輩の話は本当だったのだ。
 私の先輩には物書きを生業にしている人が何人もいる。しかし、いい年して1日せっせと10枚も書いて発表している博覧強記の猛者は管見にして知らない。かくいう私でさえどんなに頑張っても筆が遅くて平均1日3枚が限度だ。これは物書きの常識だが、書いたものが活字として世に出ればその内容に対する責任がともなう。
 だから事実誤認や相手に失礼のないよう配慮し、資料をうず高く積んで何度もそれに目を通しながら原稿を書いていく。売れない空想小説の量産はいざ知らず、そういう原稿執筆の基本作業を知っているなら、鶏が卵を産むようには簡単には書けないものだ。だから「にわかには信じられない」のであって、むしろ池田さんの多作の「からくり」を疑ってみるのが自然の成り行きというもの。
 後輩の発言がきっかけで聖教新聞をめくっていたら、なんと「池田大作全集が100冊目の刊行」という1面トップ記事が目に飛び込んだ(3月7日付)。しかも聖教新聞社には全部で150巻も出すという壮大な構想があるらしい。そこには、この全集が19年連続でベストセラー第1位だと書いてある。うらやましい限りだ。同じ新聞の中面には今までに出版した100巻の分類と内容一覧が載っていた。創価学会は300万とも500万ともいわれるほどの会員の所帯数を誇っているから、仮に組織を通じて100万所帯に1冊を割り当てて本を販売してもミリオンセラーにはなる。しかしこの膨大な個人全集はいったい私たちに何を示しているのか。
 その手の本をかなり所蔵しているという知人に頼んで、池田大作さんの筆になるという著作の「全集」の類いを調べてもらった。
 初めて池田さんが「全集」らしきものを世に出したのは、彼が第3代の創価学会会長に就任した翌年の昭和36年8月24日発行『会長講演集』だった。これだけでも13巻に及ぶのに、それとは別に昭和37年7月3日から『巻頭言・講義集』が巻を重ねている。
 昭和42年9月1日に刊行を開始した『池田会長全集』は論文・随想・講義・小説と内容ごとに1冊ずつ編集した全集の体裁になっている。そのあと昭和45年1月2日には、またまた『池田会長講演集』の刊行がはじまり、さらに昭和52年7月3日には『新版池田会長全集』の第1巻が刊行された。そして、たぶんこれが池田さん最後の全集になるのだろう、昭和63年に『池田大作全集』の発刊を開始した。つまり池田さんの全集は少なくとも6回は再編集・再改訂され、形を変え、それ以降のものも加えて世に出されているということなのだ。
 まず単行本を出し、改訂して全集として売り、またその改訂版を出して売り、さらにその改訂版を出しては売っている。150巻もの個人全集はたしかに前代未聞だが、内容の同じ原稿をいちいち再編集・改訂して屋下に屋を架し、屋上に屋を架す。そんなふうにして宗教法人が出版業で収益をあげているというのも、これまた前代未聞。

 探すのが難しい「自筆の書」

 池田大作さんの著作とされている本のなかには、日蓮聖人の主要な遺文の講義録もたくさんある。全集モノの調査のついでに、それらの本の序文に目を通してみて面白いことに気がついた。講義録は、そのほとんどを創価学会の教学部が執筆・編集し、それに池田さんが目を通して自分の著作として発行していたのだ。
 たとえば日蓮聖人には「観心本尊抄」という遺文がある。この遺文の講義録は創価学会の第2代会長だった戸田城聖さんが出版したが、戸田さんはこの本の「序」に「本講義にあたり創価学会教学部長小平芳平君の援助に感謝する」と記している。講義録の形態は戸田さんの時代からすでに小平芳平さんによって確立されていた。
 アジテーターで鳴らし、教学畑にほとんど馴染みがなかった池田大作さんは、戸田さんの死後3年を経て会長に就任し、当時参議院の議員(全国区)だった小平さんのスタイルを踏襲して遺文の講義録を出版していった。
 はじめのうちは「本講義の執筆にあたり、教学部長小平芳平氏の絶大なる援助を深謝し、副教学部長多田省吾氏、教授黒柳明氏の名哲なる教学上の援助を心から謝す」(昭和39年4月2日発行=報恩抄)、「本講義の完成にあたり、多繁のなか教学部長小平芳平君の御尽力を心から謝する」(昭和39年11月17日発行=撰時抄)、「原島嵩君の援助を心から感謝して止まない」(昭和40年4月2日=御義口伝)、「この講義録作成にあたり、青年部を代表し多田省吾君、学生部を代表し原島嵩君および桐村泰次君、高等部を代表し上田雅一君の四人の青年教授の方々の多大なる研究編纂の労を心から感謝する」(昭和41年7月3日=立正安国論)というふうに、教学畑で活躍する人たちの名前を「序」に記してその功を称えていた。
 これらの「序」は昭和42年の『池田会長全集』まではそのまま収録されていたが、やがて時代が下って会長のカリスマ化が進むとともに、実質的な執筆・編集を担当した教学部長や教学部教授の名はぬりつぶされていく。そして膨大な講義録は、れっきとした池田さんの著として、いま出している全集に収められている。
 講義録の出版にかかる問題はまだある。たとえば日蓮聖人の「立正安国論」について、池田さんは講義録で「立正安国論とは王仏冥合論にほかならない」「日本の王仏冥合を達成することが、世界平和への最直道であることも明白」としている。至近の全集ではこの部分は省きたいだろうし、おそらく省きたい部分はあっちにもこっちにもあるはず。それも150巻もの全集の管理となれば、有能な管理人が必要だ。聖教新聞の編集局のご苦労が推察される。
 日蓮聖人の遺文の講義録は、むろん池田さんの執筆ではないが、では、どれが池田さんの筆になるものなのか。むしろそれを探し出す作業の方が圧倒的に困難だ。池田さんの主著といわれる『人間革命』でさえ、代作者がいる。しがない童話書きだった篠原善太郎さんだ。これは創価学会の幹部の間では有名な話。篠原さんが原稿を書き、池田さんがそこに若干の手を入れて小説は作られた。ただいま「創価学会会長」で売っている原田稔さんは、かつては『人間革命』の担当記者として、本部3階図書館の脇の書斎で原稿を書いていた篠原さんのお手伝い役だった。だからそのことを原田さんはよく知っている。代作者の篠原さんは池田さんのご威光で東西哲学書院の社長にもなったが、今はもう小平芳平さんと同じくモノを言わない人たちの仲間入りをしている。
 汗牛充棟という言葉がある。牛が引いて汗をかくほどの蔵書の多さをいう。池田大作さんを信奉する創価学会の会員さんの家の書棚は満杯で、さぞ床もたわわに違いない。しかし自己顕示欲の権化のような池田さんが、百万言費やし、金に飽かして出版した全集だとしても、残念ながらその内容といい、影響力といい、私にいわせれば宮沢賢治の一編の詩『雨ニモマケズ』を凌ぐことも、太宰治の短編『走れメロス』に及ぶこともない。
 いくら力を入れて書いているつもりでも、代作スタッフの心の底には「しょせん、あの人の代作ではねぇ……」という、投げやりな気持ちが横たわっているものだ。

岩城陽子(いわき・ようこ)フリーライター。1952年生まれ。業界専門紙記者を経て、フリーに。宗教問題をフィールドワークの一つにする。

4月1日号 目次
閻魔帳 選挙イヤー最大争点としての「政治とカネ」/古川利明
特集/池田大作全集100巻・人間革命5000回礼讃の裏事情
全集100巻の刊行を可能にした、池田大作「多作」のからくり/岩城陽子
質より量!『池田大作全集』の笑止千万/尾崎 洋
人間革命5000回に敬意評した識者の池田大作認識の程度/本誌編集部
特報/調査費問題で揺れる広島市 不正支出のほとんどは公明党市議団の分だった/山田直樹
短期集中連載 創価学会党化した自民党(6) 詐術的・謀略的手段を平気で用いる自民党(その2)/白川勝彦

●連載 今月の「悪口雑言」――「平和と人権」を看板にする団体の“ホンネ”集
信濃町探偵団――創価学会最新動向
世之介の「つれづれなるまま」(61) 桜開花予想/金原亭世之介
雑誌記者の備忘録(78) 大相撲八百長告発報道の背景/山田直樹
ヨーロッパ・カルト事情(111) セクト対策の原点回帰――セクト的逸脱対策関係省庁本部(MIVILUDES)2006年度報告書について/広岡裕児
執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記

編集後記から  
暖冬だった今年の冬ですが、桜の開花直前の3月半ばになって寒気が襲来。東京も観測史上、もっとも遅い初雪がちらつきました。その結果、桜の開花時期予想が混乱し、気象庁が謝罪するという顛末も生じました。  
その桜を芸名に冠する桜金造の東京都知事選出馬には驚かされました。いくらNHKの人気バラエティ番組「お江戸でござる」で座長役を張ったとはいえ、人気・知名度とも抜群とはいえない桜金造だけに、マスコミも「なぜ」と狐につままれたようでした。  
しかし翻ってみれば、平成11年の都知事選に際して、石原慎太郎氏は、「週刊文春」(99年3月25日号)の池田大作認識を問うアンケート調査に、「悪しき天才、巨大な俗物」と回答しているように、もともと創価学会・池田氏と石原氏は犬猿の仲だったのです。……  それにしても、いくら「お江戸でござる」で名前を売ったとはいえ、B級タレントの域を出ない桜金造の出馬が、創価学会の活動家であるというだけで都知事選の帰趨を左右する可能性があるとは。日本の政治の貧しい現状が、ここに象徴的に現れているといっても過言ではないでしょう。

投稿者 Forum21 : 2007年04月01日 22:14

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