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2007年06月01日

特集/揺れる宗教と政治――統一地方選から参院選

参院選に強まる宗教的呪縛
乙骨正生 ジャーナリスト

 「大将軍」と呼吸をあわせろ

 先に行われた統一地方選挙で、創価学会が支援した公明党は全員当選を果たした。これを創価学会は「創価完勝」と呼び、「広宣流布へ!『法華経の兵法』で快進」(4・24付「聖教新聞」)などとアピールしている。
 本誌の5月1日号特集記事「統一地方選・政教一体の実態」で詳述したように、創価学会は、今回の統一地方選挙を「本門の池田門下生の初陣」と位置付け、「池田先生にお応えする」との合言葉のもと、熾烈な政教一体選挙を繰り広げたが、統一地方選終了後の4月26日に開催された創価学会の本部幹部会は、そうした宗教活動と政治活動を一体化し、政治活動での成果を宗教的勝利とする特異なイデオロギーに立脚する創価学会の実態を赤裸々に示すセレモニーとなった。その一端を各種幹部の発言に見てみよう。まずは原田会長。
 「本年緒戦の統一地方選挙、見事に完全勝利を果たし、晴れやかに5・3『創価学会の日』を迎えることができました」(4・27付「聖教新聞」)
 こう口火を切った原田会長は、今年予定されている統一地方選、そして参院選が、「本門の池田門下の初陣」だとあらためて強調。統一地方選に続き、参院選でも勝利を勝ち取ろうと次のように呼びかけている。
 「この勝利も、すべては同志の皆さまの献身的な奮闘の賜物であります。心から御礼申し上げます。大変にありがとうございました。『本門の池田門下の初陣』――その掉尾となる上半期後半へ、私どもは本日より、勝って勝って勝ちまくる、さらなる快進撃を進めてまいりたいと思います」
 その勝利の要諦は、池田大作名誉会長と呼吸をあわせることだと強調する原田会長。池田氏を「大将軍」と持ち上げつつ、こう学会員を扇動する。
 「池田先生こそ、仏意仏勅の広宣流布を進めてくださる大将軍であります。ゆえに、先生と呼吸をあわせ、おっしゃる通り、そして行動で示してくださる通りに戦えば、必ず道は開ける。これが本門の池田門下の確信であります」
 同様に「青年の月・7月へ――“連戦連勝”の金字塔を」と題して発言した竹内青年部長も、「広宣流布とは間断なき闘争であります。本日よりは、常勝青年部の燃え上がる情熱と勢いで、青年の月・7月へ連戦連勝の破竹の大進撃を開始してまいりたい」と決意発表。「日本の未来を開く大事な戦い。青年が青年を呼ぶ圧倒的な拡大で、断じて連続勝利の金字塔を打ち立てていこうではありませんか」と呼びかけている。
 ここでいう「連続勝利」とは、参院選の勝利に他ならない。すなわち統一地方選に続いて7月22日に投開票が予定されている参議院選挙でも、公明党の改選議席を確保するとともに、いまや融合しつつある自公政権を安定化させるために与党での過半数維持を目指して戦い、勝利しようということである。当然、来るべき参議院選挙では、過去の衆参両院選挙同様、選挙区では自民党候補を創価学会・公明党が支援し、その見返りとして自民党候補の後援会員や自民党員に対して、比例区での公明党への投票を要求するという「政党政治の堕落」(2月13日の衆院予算委員会での亀井静香代議士発言)現象が繰り広げられることとなろう。
 そしてこうした「政党政治の堕落」現象の結果、仮に自公が過半数を維持した場合、創価学会はその選挙結果を「広宣流布」の勝利、「本門の池田門下の初陣」における勝利と喧伝し、自らの正当性の根拠だとアピールするのだろう。また同時に、かつて創価学会の秋谷会長(当時)が、参議院全国区での公明投票を「広宣流布のバロメーター」と位置づけているように、来るべき参議院選挙でも創価学会は、悲願である1000万票の獲得を目指して、熾烈な選挙闘争を展開。仮に1票でも前回の得票数を上回れば「上げ潮」だの「常勝」だのと気勢を上げる腹づもりなのだ。
 こうした宗教的イデオロギー・宗教的パッションに基づいて国会議員や地方議会の議員が選出され、立法・行政の両面に大きな影響力を及ぼすばかりか、参議院の法務委員長を30年以上もの長きにわたって公明党が独占し、司法界にも影響力を行使している事実は、一般の国民・市民にとってゆるがせにできない重大問題である。

 “法戦”への参加を強調

 そうした公明党の政治的影響力は、今回の統一地方選挙の結果、従来にも増して拡大している可能性がある。そこで資料的意味合いも含めて、今回の統一地方選挙の結果、招来された事実を、数字的に列挙しておくことにする。まずは公明党の全勢力。
 ・衆議院議員31人。・参議院議員24人。・都議会議員22人。・道府県議会議員189人。・政令指定市議会議員187人。・東京特別区議会議員194人。・一般市議会議員1967人。・町村議会議員504人。合計3118人。
 続いては公明党議員の議会における議席占有率が20%を超えた議会数。今回の統一地方選挙の結果、公明党議員の議席占有率が20%を超えた議会は全国で39議会に及んでいる。占有率トップは定数22議席中7議席を獲得し、占有率31・8%の大阪府守口市と門真市。以下、東京都武蔵村山市(6/20 30%)、江戸川区(13/44 29・5%)、足立区(14/50 28%)、大阪府豊中市(10/36 27・8%)と続く。以下、占有率に従い議会名のみ記す。
 東京都板橋区・江東区・昭島市・八王子市・大阪府寝屋川市・四条畷市・東京都大田区・練馬区・新宿区・大阪府枚方市・東京都東村山市・大阪府岸和田市・東京都北区・東久留米市・東大和市・埼玉県川口市・東京都豊島区・大阪府高槻市・泉大津市・東京都墨田区・大阪府八尾市・東京都中野区・小平市・兵庫県伊丹市・東京都世田谷区・品川区・福生市・千葉県船橋市・茨城県日立市・大阪府富田林市・貝塚市・和歌山県和歌山市・福岡県春日市
 ここで注目すべきは20%以上の議席占有率を示した議会は、東京と大阪に偏っている事実である。東京と大阪以外には、茨城・埼玉・千葉・和歌山・兵庫・福岡で20%の占有率を超える議会がそれぞれ1議会あるが、それ以外はすべて大阪と東京の議会だという事実は、創価学会が典型的な都市型宗教、それも構成員が東京と大阪に偏在しているという事実を示している。
 また今回の選挙結果に現れた各候補の得票数からも、綿密な地域割りを実施する創価学会の組織選挙の手法が読みとれる。以下に、そうした事実を示すいくつかの選挙区例を摘示してみたい。
 まずは創価学会本部のある東京都新宿区議選。定数38の新宿区議選に公明党からは9人の候補が立ちすべて当選したが、その得票数は最多得票の2472票から最低得票の2003票にいたるまで、すべて2000票台前半に集中しており、最多得票と最低得票の差は463票しかない。同様に議席占有率トップの大阪府門真市でも、当選した7人の候補の得票差は、最多得票の2710票から最低得票の2185票まで525票の差でしかない。この間に他の5人の候補がすべて入っているのである。
 こうした結果は、候補が2人だった地方の議会選挙により顕著に見られる。例えば北海道の倶知安町では、当選した公明党候補2人の票は、485票と484票、同じく七飯町では809票と804票。なんと埼玉県の寄居町では1106票と1106票と同数だった。
 こうした事実が示すように創価学会の選挙手法とは、その選挙区内の基礎票をきっちりと地域割りし、当選できる候補だけを擁立して確実に当選させるというものなのだ。そしてこうした強固な組織選挙を可能にしているのが、宗教的強制・宗教的呪縛である。本誌の5月1日号の特集に明らかなように、創価学会は各種選挙を宗教上の法戦と位置付け、これに参加すれば功徳・利益があり、参加しないのは背信・背教だと、宗教的な昂揚心と恐怖心を煽ることで学会員を選挙に動員している。
 来るべき参議院選挙でも創価学会は、こうした手法で動員する基礎票をきっちりと計算し、1人区や2人区で、自民党候補を支援することは間違いない。
 その結果が、国家や地方公共団体の動向を左右することを私たちは忘れてはならない。

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』(かもがわ出版)など。

投稿者 Forum21 : 2007年06月01日 19:59

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