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2007年03月01日

記念特集/創刊5周年に寄せて

テレビ界の「鶴タブー」
ジャーナリスト 有田芳生

 朝日ニュースターで放送されている「ニュースの深層」に出演した。テーマは「統一教会と政治」。キャスターの上杉隆さんの進行で、いまだテレビではタブーとなっている国会議員秘書への浸透などの問題を自由に話すことができた。ところが番組が終った直後に山崎拓自民党元副総裁から抗議電話がかかってきた。上杉さんがただちに「山拓」本人に電話をしたところ、わたしが山崎訪朝は統一教会ルートだったなどと語ったことが事実と異なるというのだ。「アリタは嘘つきだ」「告訴する」とも言い添えたという。
 山崎訪朝が統一教会系の「ワシントンタイムズ」社長から勧められたことをきっかけにしていることは否定できない事実だ。ただちに統一教会のディープスロートに連絡を取ると、いくつかの内部資料を渡してくれた。その1枚は2003年の総選挙時の内部文書であった。そこには小選挙区で立候補している山崎拓氏などの自民党候補に投票するように書かれていた。驚いたことは比例区への指示である。
 「比例区は公明党」と大きく書かれているのである。「全食口」すなわち全信者への指令だ。「キリスト教」を標榜する統一教会が、創価学会を基盤とする公明党を支援していることはどれほど知られているだろうか。30年も統一教会問題に取り組んでいる知人に知らせたところ「知らなかった」という。統一教会の公明党支援の根拠は常に権力にすり寄る体質にある。「類は友を呼ぶ」権力志向が両者にはあるのだ。統一教会の文鮮明教祖は「4権を握れ」と命じたことがある。政治、経済、文化、マスコミだ。ここでもまた公明党=創価学会と同じ志向が現れている。
 わたしが『現代公明党論』で公明党の与党化路線を書いたのは1984年。あれから20年が過ぎ、いまでは自民党と公明党が与党として権力を行使している姿は当たり前の政治風景となってしまった。テレビの世界でも学会員ばかり出演する番組さえ多くなりつつある。そこで宗教的なことが語られるわけでもないが、互助会的な意味合いで入信する芸能人もいるようだ。大物学会芸能人の口利きで番組出演が実現することがあるからだ。学会員プロデューサーやディレクターの「引き」で出演できることも多い。身過ぎ世過ぎの世界にあって、それもまたそれぞれの生き方である。しかしテレビ界でも創価学会タブーが拡大再生産されていることには注意しなければならない。
 そうした実態についてテレビで発言することがはばかられるのは、番組制作上の核心にあたるからだ。さらには池田大作名誉会長の報道もまたタブーとなっている。たとえば国会で池田名誉会長のことが取り上げられたとき、テレビ局によっては、あえてそのニュースを取り扱わない場合がある。あるいは取り上げても、国会議員の発言のなかで池田名誉会長の名前が流れても、字幕ではあえて表記しないこともある。こうした実情を教えてくれたあるタレントも「名前は絶対に出さないでくださいよ」と言うのだった。いまだ「鶴タブー」は生きているのだ。
 週刊誌などでは創価学会批判は比較的自由に行われているようだ。それでも知られざる由々しき問題が生じている。ある創価学会員のブログでは「週刊新潮」編集部の内部情報がしばしば明らかにされている。「驚きましたよ。内部にいるものでも少数しか知らないことが漏れているんですから」とはある編集部員の話だ。公明党=創価学会は不気味で面倒な相手なのだ。
 そんな「巨像」に真っ向から対峙する「フォーラム21」が5周年を迎えたという。たとえ小さくとも確信ある主体は多数に影響を与えることができる。戦前の大政翼賛体制は日本的全体主義であった。いまは新たなる翼賛体制が形成されつつある。その推進者が自民党であり公明党=創価学会なのである。批判の自由が狭まる度合いは、全体主義への傾斜に比例する。タブーに風穴をあけ、民主主義のこれ以上の破壊をとどめるために「フォーラム21」のさらなる発展を期待したい。


(ありた・よしふ)1952年生まれ。出版社勤務を経て、86年からフリーとなり『朝日ジャーナル』で霊感商法批判キャンペーンに参加。同誌休刊後は『週刊文春』などで統一教会報道。都はるみ、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを『AERA』『週刊朝日』『サンデー毎日』に執筆。現在は日本テレビ系「ザ・ワイド」に出演。『現代公明党論』『(白石書店)『「幸福の科学」を科学する』(天山出版)『歌屋 都はるみ』(講談社、文春文庫)『有田芳生の対決!オウム真理教』(朝日新聞社)『「コメント力」を鍛える』(NHK新書)『私の家は山の向こう』(文藝春秋)など著書多数。

投稿者 Forum21 : 2007年03月01日 02:06

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