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2006年12月15日

特集/公明党目黒区議団総辞職と創価学会・公明党

税金を食い物にしていた公明目黒区議団の破廉恥

ジャーナリスト 山田直樹

 牧口・戸田ゆかりの目黒区

 東京都目黒区といえば、初代会長・牧口常三郎が同区の白金小学校校長を務めたり、二代目・戸田城聖が居を構えたりと創価学会には何かとゆかりのある地といっていいだろう。区議会の定数は36。最大会派自民(10人)に次ぐ勢力(6人)を持つのが公明党である(民主党系会派も同数)。以下、共産党5人、「独歩の会」(無所属)4人、無会派3人という構成だ。(2名欠員)
 その公明党区議が突然、全員辞職した(11月30日)――。政務調査費の「不適正使用」に端を発した引責辞職ということに建前上はなっている。がしかし、この安直な辞職で説明責任が果たされたとはとても言えない。
 そもそも政務調査費とは何なのか。目黒区は「交付に関する条例」と「交付に関する規定」を定め、2001年度から会派または議員に対して月額17万円を支給している。地方自治法に則り、会派や議員が「地方行政等の諸制度や動向を調査し、専門的知識を得るための経費」として支給されるもの。原資は血税である。目黒区公明党の場合、議員数×17万円×12カ月分であり、〆て1224万円也――。世田谷区の月額24万円には及ばないが、23区のほぼ平均値に相当する。
 ちなみに読売新聞の調べでは、23区議会のうち政務調査費に領収書の添付を義務付けているのは8区。ただし、領収書原本を求めているのは千代田区と品川区のみで、残りはコピーで可。以上の点から言えるのは、政務調査費が議員の「ウラ給与」として使われても、ほとんどチェックが効かない現実があるということ。今回、問題となった目黒区でも「領収書のコピー」さえあれば通るワケで、その中身をクロスチェックしてみないと実際の使途は不明のままなのだ。ご立派なことに目黒区には、「政務調査費決定事項」なる決まりがあり、こんな風に書かれている(一部抜粋)。
 「領収書」―宛名、日付、発行者の氏名、内容等が書いてあれば領収書として認める。なお、レシートの場合は内容等の説明があれば可とする。
 「年会費 校友会費」―政務調査費として認めない。
 「懇親会 新年会」―招待を受け、実際に出席をして挨拶等をし、さらに目黒区全体に関わるものに限る。また会費は社会通念上認められる金額であれば可とする。(例、〇商店街連合会の懇親会 ×商店街)

 「不適正」とはどんなものだったのか。筆者の手元には、公明党目黒区議団が提出した調査費の収支報告書と、それを慌てて訂正した3つの修正報告書がある。そこにある呆れた使いっぷりに関しては、後ほどじっくり明らかにする。まずはここに至った経緯をざっと振り返ろう。

・06年10月30日――梅原辰郎元区議(保守系市民団体『目黒オンブズマン』代表)が宮沢信男議長(自民)と公明党区議団に対して、政務調査費の住民監査請求を起こし記者会見を開く。ちみなに監査請求に対しては監査委員が60日以内に結論を出す決まりになっている。この時点で委員は区議OB、税理士、公明党区議、無所属区議の4名で構成され、議員自身の支出に係る問題のため区議の2人を除斥して監査が行われる。
・11月1日――毎日新聞がこの件を取り上げ「目黒区議会『抱き枕など不適正』政務調査費で住民監査請求」の記事掲載。
・11月9日――独歩の会の増田宣男議員がこの問題につき一般質問通告書を提出。議長と公明党に激震が走り始める。
・11月17日――公明党区議団は「調査研究費」(政務調査費の科目のひとつ)7054円(!)の削除手続を行う。この中に那覇市のタクシー会社の領収書へ「上目黒3丁目→北新宿」と手書きで走行経路を書き込んだものがあった。沖縄のタクシーが都内で客を拾った(?)という実に不思議な収支報告である。
・11月20日――増田議員の一般質問。議長は突然、本会議場での撮影禁止(前例なし)を命じ、報道陣との間で混乱が起こる。
 同日、TBSがその様子をニュースで流し一躍“全国区”の話題となる。(TBSは以後、連日、この件を報道)
・11月22日――公明党区議団が766万円の返還を申し出たことが判明。しかしこの日午前の議会運営委員会(公明党委員も出席)ではその事実の報告なし。この席上、共産党議員による収支報告書のチェックを議会事務局がきちんと行っていれば、今回のような不当・違法な支払いは発見できた旨の発言に対し、出席していた公明区議・寺島芳男が、
 「そんな傷に塩を塗るようなことを言わせるな、やってられない」
 と怒鳴って、委員会室から退場するという珍事発生。
・11月24日――午後5時半、都庁記者クラブで高木陽介公明党都代表代行が記者会見し、区議6名の辞職を表明。午後6時に、目黒区公明党区議団が議長へ辞表を提出した。高木代行は記者から不適正な支出の詳細について質問されると、「区議団が自主調査したので詳しい報告を受けていない」と具体的中身を明らかにしなかった。
・11月30日――宮沢議長辞職。公明党区議の議員辞職を本会議で承認。

 以上がざっくりとした経緯である。11月24日の常任委員会まで出席していた公明党区議は、その後“雲隠れ”。委員会にも本会議へも出席せず。現在(12月7日)に至るまで、彼ら自身の口から今回の事態に関する説明、釈明、謝罪等は一切ない。
 それでは公明党区議が何を不適正、つまりヤバイと思って返してきたのだろう。領収書のコピーを精査すると、この集団のあまりのデタラメぶりに声も出なくなる。最初に断っておかねばならないが、政務調査費は一律に支給されていて、実費分を後から清算する方式ではないのだ。公明党の場合、1224万円の支給に対して、支出は1374万余。つまり「全額使い切ってアシが出た」という報告書を提出している。どうやら役所の予算同様、何としても使い切りたいという意図がミエミエだ。追々述べるが、なまじ領収書添付が義務付けられたため「何でもかんでも取れる(領収書を)ものを掻き集めて」しまった印象である。整合性を問われて、ボロが出たといえる。

 研修費でほうとううどん

 さっそく中身を見ていこう。政務調査費はいくつかの項目に分けられて細目が立っている。
・調査研究費
・研修費
・会議費
・資料作成費
・広報費
・事務費
 ――これらに領収書のコピーが添付されているが、宛名は議員個人名だったり区議団名の他、単に「上様」、あるいはレシートもある。
 一躍話題になったのは「調査研究費」内にある「調査研究中の故障修理」だ。
 これで5万円以上の経費を落としているのが島崎孝好議員や中島洋士議員である。自身の車の整備費用を「故障修理」にしてしまった。オツムの方が故障しているとしか思えない。病院の駐車場代(200円、東京共済病院)やCD制作費(2000円、目黒区立第二中学校)というセコイのもある。
 とまれこの調査研究費、3回に分けて訂正して取り下げた額は21万円余。総額122万円の約17%が不適正だった。
 一方、総額146万余のうち117万円、実に8割が不適正だと取り下げてきたのは研修費の項目。
 05年8月6日付「貸切バス代金」73500円也を添付してきたのは前出の島崎議員。支出内訳は「旅費」だと。この日、島崎議員は「甲州ほうとう小作 石和駅前通り店」で31100円を使い(お食事代とある)、「会議に伴う食事代」として計上(項目は『会議費』)している。研修費をよくよく調べると、こんなシロモノがあるではないか。
 「高速代」(支払先は首都高や道路公団)高井戸・八王子(調布料金所・車種特大)1650円〜一宮御坂(中央高速・特大)5150円〜八王子本線(特大)6350円〜永福本線(大型)1400円。
 つまりこういうことだ。バスを貸切り、山梨に出かけ、石和でほうとうを食してお帰りになった。これのどこが政務調査なのだろうか。ありていに考えれば、支援者や業界関係者と想像しうる一団が日帰り旅行をし、それを会議費や研修費で落としているというふうにしか見えない。
 さらに上をゆくのが川崎恵利子区議である。テレビで何度か取り上げられたが、見逃した方のためにお復習いしてみる。昨年11月23日の勤労感謝の日。この日付で川崎議員は3枚の領収書を出している。支払先別に見よう。
・甲府市の「かいてらす」内、「ワインクラブ」で「お食事代」の74970円。
 「??山梨県公園公社」で「チケット代」の16500円。
 「山梨県立美術館」で「観覧料」の12800円。
 一方、同日付けの高速領収書もある。島崎議員のケース同様、中央高速や首都高の領収書、〆て13840円分が研修費内の「旅費」に計上されている。そのいずれもが車種を特大や大型としているから、やはりバスを貸し切った日帰り旅行に相違あるまい。ちなみにそのバス代だが、この年の12月28日付で不思議な領収書が存在する。宛名は「公明党目黒区議団様」で、504000円。切っているのは東京シティ観光。バス会社である。この領収書には細目があり「大型バス借上代(11月3台分、12月3台分)」と記載されている。単純に台数分で割ると、1台あたり84000円。
 同じく23日付で、別の高速道路の領収書とバスの駐車場代が添付されている。これらはすべて研修費内の「旅費」で処理されているが、つなぎ合わせるとこういうことが分かる。川崎区議以外の公明党区議の誰かが、神奈川県方面に日帰り旅行に出かけた。領収書の車種から判断すると、これもまたバスが使われた可能性が高い。
 翌12月3日。研修費内の支出内訳「研修に伴う食事代」領収書を出してきたのは公明党区議団団長の俵一郎氏。食事代計、142800円ナリと豪勢である。発行元の「マホロバマインズ」をオンブズマンが調べると、そこはなんと「オーシャンリゾートホテル」だった。温泉入浴付きのランチプランをこのホテルは用意しているが、いったいどんな研修をなさったのだろう。
 この収支報告書と領収書で目につくのは、なにもこうした日帰り旅行ばかりではない。「調査研究費」の支払い内訳「ガソリン代」と記された領収書(06年1月3日付)には、「洗車 1680円」と明細が載っている。しかも小さい字で「手」とある。何のことはない、値段から言ってもこれは「手洗い洗車」の料金だろう。洗車が「調査研究」とは、恐れ入る。

 ディズニーシーで会議?

 続いて「会議費」に触れる。総額は145万円余と研修費に並ぶボリュームを公明党はお使いだった。で、返還額は70万円弱。つまりデタラメの費用で半分近くの会議が行われていたことになる。しかし何より驚くのは、この人達の食いッ振り。
 弁当代を正々堂々と政務調査費で落とす無神経さにはおどかされる。宛名は区議団で、65000円(05年4月5日付)、40080円(同6月4日付)、93000円(同9月7日付)、90000円(同12月30日付)の領収書が添付されていた。先の川崎議員は、お食事大好き、お菓子大好き人間にみえる。同議員宛ての領収書をランダムに挙げる。
・カルディコーヒーファームで4415円(05年4月6日)
・同じ店で1060円(05年4月27日)
 まさか自宅用のコーヒー豆購入に、使ったのではあるまいな。まだある。東急百貨店東横店も行きつけらしい。
・同店内「花園饅頭」で2100円(05年4月24日)と生鮮売り場で4843円(同26日)。
 7月30日には、「アメリカンクラブハウス」で26300円のお食事。さらには「ヤクルト御品代 5214円」(同9月8日)というものまである。支出内訳は「茶菓代」で、項目「会議出席者用お茶ジュース代」となっているのには笑うしかない。
 川崎議員はこの年の年末、続けて3枚の領収書を出しているが、読者はどうご覧になるか。いずれも「茶菓代」や「食事代」で会議に伴うと記してある。12月27日には、藤沢市片瀬海岸の御菓子司なる店で、2680円ナリの「もなか」他をお買い上げ。同じ日、恐らく近所であろう片瀬3丁目は湘南モノレール駅1階の店で12600円のお食事。干物か何かは知れないが、同日、片瀬海岸の「海産物専門店」で5775円のお買い上げ。翌日は中華街有名店の聘珍楼で44780円のお食事をなさっている。いやはやどんな会議が開かれたのか……。常識的に考えれば、これらはフライペートの食事や菓子購入だろう。
 傑作なのは前出の島崎議員。よせばいいのに、ドン・キホーテ平和島店の品目入り領収書を出している。この組織の“現世利益”ぶりが十分理解できると考えるので、これを誌上再現する。品目のカタカナ書きは、読みにくいとも思うがご寛恕いただきたい。
・アダチショクヒンミックス     ¥933
・チッコパイFS 5コ       ¥1290
・カキノタネ&ピーナッツ6P 8コ ¥1104
・オトクヨウモナカ 2コ      ¥396
・ウメシバ 3コ          ¥894
・コエンザイムQ.10キャン     ¥168
・ハチミツユズチャノドアメ     ¥178
・カスガイスミヤキコーヒー1    ¥138
・17Pカットヨッチャン 3コ    ¥1194
・ヨッチャンチーカマ        ¥950
・ハルサメヌードルタンメン     ¥131
・ハルサメヌードルピリカラ     ¥131
・ハルサメワンタンショウユ     ¥131
・カスガイオオブクロワサヒ 2コ  ¥976
・カワグチヒトミハブルーヘ     ¥158
 ――以上、〆て9210円のお買い上げ。トホホ……である。
 宛名なしのレシートには、こんなものもある。
 「栗きんとき12P ¥1200 保冷Bag(小)¥80」
 で、これを買ったのは羽田空港第一ターミナルビル内の「東京ばな奈ワールド」。期日は05年12月4日(日)の19時59分。支出内訳は会議費の「茶菓代」で、「会議に伴う茶菓購入」とある。場所柄どう考えても、東京土産を羽田で買って飛行機に乗ったか、あるいは帰りに買ったかだろう。ちなみにこのレシート分は、公明党は取り下げていないのだが……。
 同じくレシートにはこんなものがある。発行元は「東京ディズニーシー マーチャント・オブ・ヴェニス コンフェクション」。お買い上げ内容は、
・センベイアラレ ¥1050
・UTS ライスクラッカー2個 ¥2100
 注目すべきはその日付。05年12月30日とある。目黒の公明党区議はディズニーシーで会議を開くのか? そうではあるまい。お土産品をちゃっかり経費で落としているようにしか常識的には見れない。

 公選法違反で地検に告発

 公明党目黒区議団が最大の支出を行っているのは広報費である。その額約514万円。政務調査費の約4割を、これに充てている。そして返還額の総計は22件、4767000円ときたのには驚いた。要するに広報費の9割以上が「不適正の支出」だと認めた訳だ。
 簡単に述べると、公明区議6名全員の出している「広報紙」の発行費用をすべて取り下げてきた。たいした不正支出もあったものだ。
 取り下げてきた比率から言えば、事務費も相当のものになる。収支報告書には355万円、政務調査費全体の約3割。このうち約200万円分を削除している。この中にはカーナビ代約15万円も含まれる。つまり事務費の半分強は、不正な支出だというわけ。
 詳細を記す余裕はないが、彼ら6名の公明党区議は複数の携帯電話を所有し、その通信費を“公私”の区別なく政務調査費で落としていたのである。
 では、なぜ彼らは辞職を急いだのだろうか。公明党に限らず、他の会派でも酷い政務調査費の使い方はいくらでもある。ある区政関係者によると、来年に控える地方選対策ではないかというのだ。これに立候補する(被選挙権)には、最低でも3カ月の居住実態が必要とされる。時間的に逆算すると、候補をよその地域から持ってくるにはギリギリの状況だった。オンブズマンはすでに東京地検へ告発状を出している。悠長に構えている余裕はなかったのである。
 詳細を記したように、公明党議員の日帰り旅行は有権者への寄付行為を禁じた公職選挙法に抵触する可能性が大きい。監査とは別に、地検のやる気がどれほどか見物ではある。

山田直樹(やまだ・なおき)フリージャーナリスト。1957年生まれ。文庫本編集者、週刊文春記者を経てフリーに。週刊新潮に連載した「新『創価学会』を斬る」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞を受賞。著書に『創価学会とは何か』(新潮社)。

投稿者 Forum21 : 2006年12月15日 19:15

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