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2006年09月15日

特集/池田宣揚報道の愚昧・狡猾

創価流ベストセラーづくりのカラクリ『池田大作/行動と軌跡』の異常な軌跡

ジャーナリスト 野田峯雄

 たびたびベストセラー入りする池田大作伝記本

 今年の春から夏にかけ、中央公論新社の『池田大作/行動と軌跡』(初版=4月2日付)がたびたびベストセラー入りして出版界でちょっと話題を呼んでいる。
 話題、と言っても「質(内容)」関係ではなく「量」関係。おまけに、顔をしかめての話。この種の新刊書をベストセラー入りさせるにはどんな手口を使ったらいいのだろう。じつは、その手口(仕掛け)を如実に示す“数字”などが出回ってしまったのだった。
 同書は、出版業界についての調査研究を行なっている出版科学研究所の「4月期の売れ行き良好書」によると堂々の第20位である。トーハンの「週間ベストセラー(5月2日調べ)」だと第17位。紀伊國屋書店の「月刊ベストセラー(4月)」でも伝記や宗教の分野で各・第7位。ほかの期も、残念ながら『ハリー・ポッター』や『国家の品格』などと競う最高層まで届かない、ベスト20位以内には記録されないものの、中公新社とは別の出版会社の幹部によると「ときどき、ザッと降る雨のような危ない売れ行きを示している」という。
 ちなみに、危ないとは「当該出版社にとっては“嬉しいけれど不安”な心の状態」とか。
 では、『池田大作/行動と軌跡』には何が盛られているのだろうか。目次を見る。
 第一章/戦下の青春、第二章/師弟不二、第三章/第三代会長、第四章/挑戦と応戦、第五章/思想と行動。
 ははーん、そういう雰囲気なのか。
 いまは図書館とか出版社内のごく少数、本屋さん関係者、さらに稀少な活字好きしか手にしないようだが、昔はけっこうもてはやされた読書関連紙のひとつに『週刊読書人』がある。その8月18日号で大東文化大学名誉教授の安世舟さん(政治学)が同書を評し、全体をこんなふうにスケッチしていた。
 「本書はインタビュー中心の、いわゆる『オーラル・ヒストリー』のアプローチをとった伝記である」
 オーラル・ヒストリーなんて気取らないでよ。とにかく池田大作ヒストリーを語る「実際のoral(口頭、口先)」はだれのものなのか。これを安さんは明示しない。だが、直後になんとなく分かるような記述が続く。
 「その(本書の)前半は、艱難辛苦にもめげずに未来のリーダーとしての修行を重ねた人格形成期が描かれている」(注は筆者)
 若き池田大作、正確に言うとタイサク(太作)さんは、なんと「未来のリーダー」だとすでに決まっていたそうだ。
 が、私の取材では、その辺にごろごろいる、ありきたりの少年および青年。つまり時代の子。ただし20代の戸田城聖さん指揮下の高利貸し稼業がとてもひどいトラウマになったようだけれど…。

 「池田“会長”は偉人だ」とヨイショ

 安さんは本書紹介をさらにこう続ける。
 「後半は、三代会長就任から現在までの創価学会の発展とそれに伴う既存社会との摩擦を契機に世間を賑わせた『事件』等について、さらりと紹介し、いわゆる世間の『誤解』や誤って伝えられていると思われるイメージを払拭させるのに少なからず貢献している記述が多い」
 で、安さんは行を変えると急いで次のように補足する。
 「評者(安さん自身)は学会員ではない」
 著者はフリーライターと称する前原政之さんである。では、こちらは何者? 創価学会員なのかどうか、レポートの客観性を知る判断材料のひとつとして関心を引かれる。
 池田大作さんの近くには、池田大作さん(創価学会)にメディアの矛先が向くや、騒ぐ、ジタバタする、吼える、罵る、謗る、脅す、叩く、あまつさえ裏活動などに奔走することを生業にしているらしい者たちが群れている。このほとんどが創価学会員だ。前原さんも同ワンメンバーとの印象が強い。そんな前原さんに非学会員の安さんはこんな苦情を垂れたりする。
 「池田会長が創価学会を現前する『人格』であるが故に、長期的な歴史的パースペクティブ(展望)から見てそれが放射する歴史的影響についてのコメントがあってもしかるべきではなかったか」
 というのは、池田大作さんが「世界平和を築く人間はこうあるべしという生き方のモデルを会員に示して戦後日本の新しい形の道徳と文化の確立に貢献」しておるからだという。そして、安さんは当伝記の評の締めくくりをピシリッとこうきめるのであった。
 「もし会長が出現していなかったならば、…学会の発展に刻印された戦後の日本社会の有り様も変わっていたであろう。このことから後世の史家は、池田会長を何百年に一人出るか出ないかの偉人と見ることは間違いなかろう」
 冗談もほどほどに。戦後日本社会は“学会の発展”に少しも「刻印」なんかされていない。また、「池田大作」の半生が虚飾の連鎖であることは周知の事実。ようするに安さんは、後世の史家にアホなたわごとを押し付けたりするよりもっと手前に重要な問題が、“伝記”評としては致命的な欠陥があることに気付くべきだ。池田大作さんは創価学会の会長ではなく名誉会長である。言い換えると安さんは大東文化大学に入学し直さなければいけないのだが、もう不勉強・安直な安さんのヨイショ(安さんは同ヨイショを8月30日付聖教新聞に丸投げ)に別れを告げて本題のベストセラーづくりの手口(仕掛け)のほうへ移ろう。

 数字が示す「一括大量買い」のカラクリ

 創価学会員は、組織活動に熱心だったり組織内の上昇志向が強かったりすればするほど、聖教新聞や池田大作本を5部も10部も買い込むか買い込まされる。これは世間の常識ですらある。たとえば池田著とされる『人間革命』は1965年の発売から累計2500万部と創価学会は胸を張る。また、日販の「06年上半期ベストセラー(05年12月〜06年5月)」によると、池田著とされる『新・人間革命(15)』は『東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン』に続いて第4位。それらはすべて裾野の学会員の身銭を切る努力、いわば献身的寄附行為の成果。つまり身内の半強制的もしくは強制的な一括大量買いだと推定された(そもそも、たいていの一般市民は池田大作本など見向きもしない)。とはいえ、この実態を示す証拠(痕跡)などはなかった。
 さて、焦点の『池田大作/行動と軌跡』だが、前述の同書関係数字とは紀伊國屋書店における売上にかかわるもの。その毎日の集計結果(紀伊國屋全店の売上部数)を春から夏にかけ丹念に追うと奇怪な動きをしていることが判明する。通常は3月から6月にかけて数十部、7月から8月にかけて10部以下なのに、間歇的に数百部とか1000部近くへ跳ねあがるのだ。たとえば3月19日は520部、5月18日は900部、同月19日は843部である。そこで、とりあえず3月19日を注視し、520部が全国の紀伊國屋店のどの店で売れたのかをチェックする。新宿本店で502部が出て、残18部は梅田本店(大阪市)などだ。とすれば新宿本店の仕入れ状況はどうなっているのか。同店は3月17日に200部を、18日に500部を取り寄せていた。つまり18日の500部を翌19日にほぼそっくりさばいてしまった、まさに一括大量買いが入ったのである。
 この結果、『池田大作/行動と軌跡』は19日の全店集計のベスト2入りを果たすのだが、全店で900部を売り上げた5月18日にもベスト2を記録している。5月18日には熊本県にある熊本店(367部)と熊本光の森店(497部)が大活躍だ(ほかは梅田本店13部など)。先の3月19日と同様、5月18日売上分の仕入れ状況を見る。すると、熊本店はなんと同日(5月18日)に搬入した400部のうち367部をすぐ右から左へ流し、熊本光の森店もやはり同日に搬入した500部のうちの497部をすぐ右から左へ流したのだった。

 割愛された高利貸しの営業部長時代

 これらの行為は違法ではないだろう。しかし、異常だ。その思いは『池田大作/行動と軌跡』を読むといっそうつのる。前原さんはなぜか、池田大作さんの脳のヒダにもっとも強く刻印されたであろう出来事(事態)を、驚いたことに、もっとも薄めて記述したりしているのだ。
 たとえば、池田大作さんの今日に至る言動のすべての祖型を形成・固定化したと考えられる昭和20年代の半ばからの大蔵商事(高利貸業)時代の池田大作さんについて。三文TV映画のテロップ「そして、瞬く間に20年が経過したのであった」のごとき「大蔵商事の一切は池田の双肩にかかっていた」などの、どうでもよろしい愚劣表現でストップ、足踏み。また、ほかならぬ池田大作さんが渾身の力をこめて繰り返し描いてきた、日蓮正宗総本山大石寺(大講堂)のエレベーター内で衰弱しきり死間近になった戸田城聖さんとふたりだけのとき交わしたという触れ込みの会話(戸田いわく「大作、あとはお前だ。頼むぞ」)について。池田大作さんが第3代会長になるもっとも重要な“劇的瞬間”のひとつなのに、前原さんはどうしたことか、あれはとんでもないデッチアゲだと見破ったのか、屁にもならないと怒ったのか、冷淡にそっぽを向いてしまう。
 さらに、前原さんは昭和40年代の池田大作さんたちの言論弾圧事件や政教一致問題について、これまでの池田大作さんたちの開き直り言動などを執拗に復誦するだけ。あァ、なんともあほらしいベストセラーだこと。

野田峯雄(のだ・みねお)フリージャーナリスト。1945年生まれ。同志社大学卒。週刊誌や月刊誌等を舞台に国内外の政治・経済・社会問題等をレポート。最近著『闇にうごめく日本大使館』(大村書店)ほか『池田大作金脈の研究』(第三書館)『破壊工作―大韓機“爆破”事件の真相―』(宝島社文庫)など多数。

投稿者 Forum21 : 2006年09月15日 18:57

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