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2006年07月15日

特集/神崎・冬柴執行部退陣と総裁選

池田大作が目論む「永久与党体制」への一里塚としての「神崎・冬柴」の更迭

ジャーナリスト 古川利明

 前倒しされた今秋の公明党大会

 「世紀の悪法」と世間から猛烈な批判を浴びた「共謀罪」をはじめとして、教育基本法改正案、憲法改正のとばぐちとしての国民投票法案、さらには防衛庁の省昇格法案など、いずれも今後の日本の進路を占う上で大きな影響を与えるであろう「重要法案」が軒並み継続審議とされ、今年の通常国会はこの6月18日で、会期延長がなされないまま、閉会した。
 それにより、永田町及び世間の関心はこの9月に行われる自民党総裁選の行方に移ってしまったが、そうした最中の6月23日の全国紙の朝刊各紙に、公明党が当初、この10月14日に予定していた代表選出のための党大会を前倒しし、9月30日とすることを決めた旨の記事が、ほぼ一斉に掲載された。
 とりわけ、この春先ぐらいから「公明党代表・神崎武法」の更迭話は既にささやかれてはいたが、そうした流れを後押しする形で、読売が「神崎代表(62)が今期限りで勇退し、後任に太田昭宏幹事長代行(60)が就く見通し」「太田氏とともに次期代表と目されていた北側国土交通相(53)が、冬柴氏の後任幹事長になる方向が強まり」と報じる一方で、毎日も「後任(の代表)には太田昭宏幹事長代行が有力視」と書き、98年秋の新公明党の結成以来、一貫して「代表・幹事長」のポストにあった「神崎・冬柴コンビ」の更迭へ向けて、じわじわと外堀を埋めようとしている「創価学会=池田大作」の思惑が、見て取れる。
 これは言わずもがなだが、表向き、代表を選出するのは党大会においてだが、実質的な「人事権」は、他の党役員人事も含めて、すべて「公明党創立者」である「池田大作」が握っている。極端なことを言えば、公明党の党大会の当日の朝、池田大作のツルの一声で、当初予定していた「新代表」のクビを急遽、すげ替えることはいくらでも可能である(もちろん、神崎の代表続投という選択肢も含めて)。
 ただ、今の「神崎・冬柴」に替えて、「太田・北側」のコンビを新執行部にすげようという池田自身の思惑がどこかにあるがゆえに、かなり早い現時点でのこうした情報のリークにもつながっているわけで、とりあえず、本稿ではこの秋に公明党の新執行部が「太田・北側コンビ」に代わるであろうという前提で、話を進める。
 
 池田大作の狙いは政権与党への居座り
 総裁は安倍・福田のどちらでも同じ

 で、ちょうどこの9月のほぼ同時期に自民党の総裁選も行われる。現時点の世論調査では、官房長官の安倍晋三がリードし、それを同じ森派の元官房長官の福田康夫が追う展開になっている。
 それゆえ、こっちの自民党の総裁選の方も、まだ誰が総裁になるかは現段階では不透明であるということを、まず、前置きした上で、ただ、安倍が後継総裁になった場合、これまでの彼の言動から推測する限りでは、確かに、今、かなり問題がクローズアップされてきている内政面での「格差社会の是正」については一定の配慮を見せるだろうが、「親米タカ派」の外交姿勢は、現在の首相・小泉純一郎よりさらに過激に突き進むのではないか、と思われる。
 それに比べると、福田の方は現在の小泉の路線とはかなり距離を置く形で、特に外交面では「小泉の靖国神社参拝」に対する批判を強めることで、より、「アジア重視」の姿勢を明確に打ち出していくことになるだろう。
 そこで、今回、編集部から与えられたテーマに、「ポスト小泉が安倍か、福田かによって、信濃町の対応や思惑はどう変わるか」という問いかけがあったが、これに対する筆者の見解をひとことで言えば、「結局、どちらでも同じ」ということである。
 1964年の公明党の結党以来、池田が目指してきたものは「天下取り」であるが、それは具体的には「公明党が政権与党」となることだった。
 ただ、せいぜい、参院比例区で1000万票も取れない信濃町の集票能力からして、公明党だけで「単独政権」を取ることができないことなど、池田とてわかりきっている。そこで、広宣流布における例の「舎衛の三億」の理論ではないが、池田が虎視眈々と狙っていたのは、そもそも自民党との連立政権だった。しかし、55年体制においては、ほぼ一貫して自民党が衆参両院で単独過半数を占めてきたため、公明党(=創価学会・池田大作)を「家の中」に入れてもらうことはできなかった。
 ところが、93年夏の総選挙で、自民党が過半数割れの敗北を被ったことで、タナボタ式にチャンスが訪れる。自民党を割って出た小沢一郎の新生党などとの細川非自民連立政権に入ることで、悲願の「デージン」のポストを取るに至った。しかし、細川政権もわずか8ヵ月で崩壊、その後、自民党は「自社さ」というウルトラCの裏技を使って政権に返り咲くと、「新進党路線」で野党暮らしを余儀なくされた池田大作を狙い打つかのように、「国会証人喚問」で徹底的に攻め抜いた。「週刊新潮」が96年2月22日号で「私は池田大作にレイプされた」との、信平信子・元創価学会北海道婦人部最高幹部のスクープ手記を掲載するのは、まさに、その最中のことである。
 これによって、「野党暮らし」がいかに危険であるかを身をもって痛感した池田大作は、「政権与党」の中に入り込むべく、自民党と手を組むという方向に動き出す。それが97年末の新進党の解党であり、さらには98年夏の参院選での自民党惨敗によって、参院における議席数が大きく「過半数割れ」したことを受けての、同年秋の公明党の再結成であった。以来、新・公明党においてはずうーっと「神崎・冬柴」のコンビでこれまで来たわけだから、少なくとも、対外的にこの2人は「自公体制の象徴」である、とのレッテルを貼ることはできるだろう。
 それゆえ、「公明党=創価学会」というより、池田大作の目指す方向性とは、ひとことで言ってしまえば、今のまま「政権与党の中」に居座り続けることである。であるので、じつを言うと、自民党の総裁が誰であろうと、あまり(というか、ほとんど)関係はない、といえる。
 池田はかつて、55年体制下で「日の丸」の法制化問題が国会で持ちあがったとき、元側近によれば、こう漏らしていたという。
 「日の丸なんて、オモチャに過ぎない。自民党にオモチャを与えてやればいいじゃないか」
 それゆえ、池田大作的には、一連の重要法案についてはいつでも「OK」なのだが、ただ、今でも内部の学会員たちの大半は池田大作のことを、「反戦平和をひたすら願う宗教指導者」であると純粋に信じ込んでおり、そういった「学会内世論」の手前、あんまり気安く公明党に「賛成」をさせることはできない、というのが、まず一点。
 それと、これは政治的な駆け引きでもあるが、「男女間のそれ」と同じく、こういうものは「小出し」にして、じらしてこそ効果がある。「生来のマキャベリスト・池田大作」にしてみれば、「イヤよ、イヤよもいいのうち」の姿勢は、まさに「当然の助動詞」である。
 
 「神崎のクビ」は飛ばさなければならない

 そこで、池田大作にとって、今、気が気でならないのは、来年夏の参院選で、「民主勝利、自公敗北」によってもたらされる「政局の流動化」であろう。仮にそういう事態になって、小沢一郎が常日頃言っている通り、「参院での自公の過半数割れ」に至った場合、解散・総選挙は遠からずあり、そこで「民主党政権」が樹立される公算が高まる。そうなった場合には、「永久与党戦略」を取っている池田大作(=公明党・創価学会)にしてみると、非常に困ることになる。なぜなら、そうやって、「家の外」に追い出されることで、自らの政権基盤が弱体化してしまうことにより、また、どんなスキャンダルが「新潮」をはじめとする週刊誌にスッパ抜かれるか、わかったものではない。
 それゆえ、世間からは「コウモリ」といくら叩かれようと、民主党にすり寄っていく必要があるわけで、その際、この4月に代表が小沢一郎に交代し、前任者から引き継いだ部分の代表任期の切れる9月以降も、ほぼ小沢の続投が確実視されていることから、池田大作としても、今後、「民公連立」も視野に置き、民主党との関係を改善していくうえで、どうしても抜かなければならない「のどに突き刺さった骨」がある。その「骨」とは神崎である。
 なぜなら、神崎は昨年6月、小沢の懐刀である平野貞夫が講談社から上梓した『公明党・創価学会の真実』の中で記した、神崎の「向島醜聞」のくだりについて、神崎自身が名誉毀損で刑事告訴しているからである。それゆえ、永田町における「政局対応」においては、池田大作が小沢民主党と組むためには、いずれかの段階で「神崎のクビ」は必ず飛ばさなければならないのである。
 いずれにしても、公明党の国会議員はそもそも「池田大作を守る」ために存在しているわけだから(それは、文字通り、池田自身がさまざまな批判にさらされないよう「守る」のはもちろんだが、さらに加えて、池田の権力基盤を維持するための「捨石」となることも含まれている)、この秋に執行部が「太田・北側体制」となったところで、基本的にはそれ自体は何ら変わるものではない。それゆえ、今度の「神崎・冬柴コンビの更迭」が意味するものとは、池田大作の「永久与党体制」へ向けた一里塚でしかない、ということであり、そのことを我々ジャーナリズムは厳しく監視していかなければならない。   (文中・敬称略)

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。著書に『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』(いずれも第三書館刊)など。

投稿者 Forum21 : 2006年07月15日 18:45

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