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2006年07月15日

特集/第三文明社刊『外から見た創価学会』のお粗末度

創価学会礼賛本に登場するメディア関係者のノーテンキ

山田直樹

 オベンチャラ本登場者に共通する
 反戦神話や平和主義への誤解

 創価学会系月刊誌『第三文明』の連載、「外から見た創価学会」が単行本化された。饒舌な学会オベンチャラ本である。登場するのは17人。全員のノーテンキぶりを紹介する紙幅はないので、メディア関係者の発言に絞って検証する。
 まずは、真剣勝負で記者が迫った(と自称する)池田大作インタビューを2回も掲載した西日本新聞社社長の多田昭重氏によると、
 〈創価学会は、地域にとって確固たる存在にまで発展、成熟されたと私は思います。いまだに一部週刊誌報道に見られる風評やうわさ話など話題にもされないくらい、日本の社会に浸透、定着してきているのではないでしょうか〉
 週刊誌報道は学会に“風評被害”を与えているわけか。西日本新聞の学会好きは、筋金入りらしい。多田氏によると自身が東京支社長時代の社長サンが池田氏の本を読んでいて「とにかく素晴らしい」と絶賛していたという。編集局の第一線で活躍していたような経歴が多田氏のプロフィールにあるが、
 〈2003年に山本(武)現総九州長とお会いした時、九州では青年層を中心に1年で会員が数万人増えたと聞きました。その話を聞いて驚き、羨ましいと思いました。私どもは新聞を百部増やすのも一生懸命ですが、なかなかそれもできない〉
 新聞記者出身なら、その数字が真実かどうか、疑ってかかるのがスジ。同社出身で月刊ペン事件の主役だった、旺盛な学会批判を行った故隈部大蔵氏は、草葉の陰でどんな思いをいたしているだろう。
 幾人にも共通する誤解がある。学会初代会長の牧口常三郎獄死にまつわる反戦神話や平和主義である。
 〈戦時中、牧口初代会長の主張は当時の軍部政権に反対し治安維持法により投獄されるという事態を引き起こしました。(略)牧口初代会長は獄中で殉教されました〉――学会シンパで著名な同志社大学・渡辺武達教授。
 〈初代牧口会長から現在に至るまでの創価学会にも、『小学生日本』(戸田城聖2代目会長が戦前、編集発行人を務めていた児童雑誌)に流れていたものと同じ精神――闘う平和主義が脈打っていると思うのです〉――戦時下のジャーナリズムを研究対象にしてきた高崎隆治氏(評論家)。
 〈池田名誉会長が世界の指導者たちと常に会見し、平和について言及するのも、根底に平和主義があるからでしょう〉――前出の多田氏。
 〈創価学会の平和活動で印象に残っているのは、70年代に男女青年部・婦人部が出した『反戦出版』です。私はすべて読みました。平和のために本当に行動できる組織は、他にないでしょう。創価学会という大きな組織が本気になって平和を勝ち取る姿勢に徹したら、それだけで日本のみならず、世界の平和に貢献できるでしょう〉――ジャーナリスト・西園寺一晃氏。
 かの西園寺公望直系で曾孫にあたる同氏は本誌でお馴染みの川崎泰資氏同様、椙山女学園大学で教鞭を取られる客員教授だが、元はといえば朝日新聞記者で北京支局にも勤めていた人物。見過ごせない発言である。だいたい氏の言う通りなら、あまたの「平和団体」がまるで無能ということになる。あるいは、創価学会に入会しないと、平和のための行動を起こす資格がないとも読める。池田氏の提言が引き金になって、公明党が自民党のケツをたたいてまでも自衛隊のイラク派遣をゴリ押ししたのを、この御仁はご存じないらしい。
 同氏はさらに、
 〈宗教を持っているひとは、やはり自分の宗教が一番だと考えます。しかし、池田名誉会長は、そのうえで、ガンジーやキングなど他の宗教の人を評価しています。なぜそうできるのかといえば、池田名誉会長が世界を知り、大きなスケールで人物を見ているからだと思います〉
 オイオイそこまで言うか。それほどのスケールの傑物が、破門された日蓮正宗法主に憎悪を抱き、批判者へのバッシングを煽動するものだろうか。日本の「他宗の人」を池田氏が評価した話など聞いたこともない。ただ、日蓮宗をいわゆる小樽問答でとっちめた、その先陣で騒いでいたのは紛れもない歴史的事実である。
 渡辺氏は、1967年にトインビーが来日した時に自分が通訳したことにかこつけて、
 「あなたの素晴らしい通訳のおかげで、日本の人々に私の思いを十分に伝えることができました」
 という同氏のお褒めのことばを、恥ずかしげもなく記しているが、
 〈池田名誉会長はトインビー博士と対談し、『二十一世紀への対話』を発刊しています。私の考える二人の共通点は、個人が大きな権力や理不尽なものに抑えつけられることを否定し、互いに助け合って持てる能力が開花する社会の建設を目指そうとしていたところです〉
 なる見解を提示される。学者がどうこの二人を共通項で括ろうと自由だが、来日時の通訳という大任を仰せつかったのに、少なくとも渡辺氏はアーノルド・トインビーの孫娘、ポーリー・トインビー女史が池田氏に請われて来日した時の内情を吐露した手記をお読みでないようである。トインビーが池田氏と“対談”したのは御歳85の時。手記をランダムに見ておこう。
 〈この本(二十一世紀への対話)は、祖父の著作の中で最も忘れられたような本で、性教育から始まって公害や戦争にいたるまで、とりとめもなく長々とした二人のおしゃべりを収録したものです〉
 〈この旅行は、いったいなんのためのものだったか。それは、帰途につくまでに、すべて判明しました。私たちは来日中、新聞やテレビのインタビューを受け、夫のピーターは国際情勢について、私は祖父について質問されました。インタビューを受けるたびに、大衆の目には、池田氏とアーノルド・トインビーの仲が、より親密なものとして映ったと思います。池田氏は自らトインビーの公の代表的な親友であり、スポークスマンであるかのように見せるため、記事やフィルムを作らせたのです〉
 ちなみに渡辺氏の章のタイトルは、「トインビー博士と池田名誉会長の共通点」である。

 「戦争とメディアの研究者」のお粗末ぶり

 筆者が特に問題だと感ずるのは、戦争とメディアの研究者を自認する前出の高崎氏だ。
 〈年齢層や職業にかかわらず、人々が一緒に集って楽しくすごせる、またいろんな問題を真剣に話し合える――そういう場所は、今では学会以外にないんじゃないでしょうか。しかも、それは利害を超えた宗教的信念による結びつきで、誰に強制されたものでもないという点が重要です〉
 その楽しくすごせる学会の信仰に疑問を持ち、袂をわかつとどうなるか。高崎氏は全くご存じないと見た。財務や選挙活動は、ならば強制ではないというのだろうか。
 〈私は、日本の数ある宗教団体のなかで、創価学会こそ『闘う集団』だと思っています。おとなしく権力の言うことを聞く団体ではないのです〉
 確かに高崎氏のこの記述の前段は正しい。しかし後段は完全に間違っている。文章講座などを首都圏の学会婦人部相手になさっている高崎氏は、添削もまた数多く手がけてきただろう。この文章では「権力」を「他人」に置きかえるべきである。そして次の一文、「おとなしく言うことを聞くのは池田氏だけである」を挿入すれば“意味”が通る。高崎氏のルサンチマンは、以下の文章ではっきりする。
 〈今でこそ『学会バッシング』の中心は新潮社の雑誌ですが、かつては文藝春秋の雑誌が中心でした。私が研究者として文春の雑誌の『戦争責任』を追及し闘ってきたのも、一つには『文春と闘うことで学会を守りたい』という思いがあったからです〉
 これはまるで、創価学会員の決意表明そのものではないか。結局この研究者は、牧口常三郎が「大善生活」その他で、どのような発言をなし、創価教育学会で誰がどんな言葉で戦争を表現し、また行動を呼びかけたのか、・研究・していないのだろう。
 同じく研究者である渡辺氏も相当にお粗末だ。曰く、
 〈そもそもメディアは公明党と創価学会を同列に考えてはなりません。創価学会の広める理想を、政治の分野においてより早く実現するのが公明党の役割で、そのために連立に参加するのは一つの方法です。両者は一体ではなく、協力関係を結んでいるにすぎません。現実政治のうえで公明党がいかなる行動をしようと、それをもって創価学会が変わったということにならないのです〉
 大学教授たる人物が、こんな支離滅裂、論理崩壊であってよいのだろうか。教えられる学生に同情したくなる。系列の出版物でいくら学会を他人から褒めちぎらせても、効力は会員にしか通じない。それほど立派な組織なら、日本中の出版社から礼賛本が出て、ベストセラーになってると思うけど……。

山田直樹(やまだ・なおき)フリージャーナリスト。1957年生まれ。文庫本編集者、週刊文春記者を経てフリーに。週刊新潮に連載した「新『創価学会』を斬る」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞を受賞。著書に『創価学会とは何か』(新潮社)。

投稿者 Forum21 : 2006年07月15日 18:40

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