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2006年04月01日

東京地裁―日蓮正宗僧侶への誹謗中傷記事で創価学会による名誉毀損を認定

事実無根のデマ記事で中傷

 宗教法人・創価学会ならびに秋谷栄之助会長、青木亨理事長(宗教法人・創価学会代表役員)、原田稔副理事長、奥山義朗副会長、杉山保青年部長、弓谷照彦男子部長という創価学会の首脳幹部らの名誉毀損による不法行為責任が、3月13日、東京地方裁判所で認定された。

 3月13日午後、東京地方裁判所民事18部(原敏雄裁判長)は、日蓮正宗の本山・妙蓮寺塔中寺院・本妙坊の樽澤道広住職が、「聖教新聞」掲載の座談会記事で名誉を毀損されたとして、宗教法人・創価学会と秋谷会長、青木理事長以下6名の被告を相手取り、「聖教新聞」紙上への謝罪広告と損害賠償1000万円の支払いを求めていた民事訴訟において、被告全員の不法行為責任を認定、原告に80万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を言い渡した。

 問題となったのは平成16年2月13日付「聖教新聞」掲載の「大石寺は悪鬼魔民の栖」とのタイトルのつけられた「正義と勝利の座談会」。同記事で秋谷会長、青木理事長、原田副理事長以下の首脳幹部は、平成6年(実際は平成7年で「聖教新聞」の誤記)に行われた本妙坊信徒の葬儀の席上、樽澤住職が戒名料200万円を強要したとして、「樽沢道広 葬儀で開口一番“戒名に200万円出せ?瓩閥?要」の見出しのもと、次のように樽澤住職を誹謗したのだった。

 「日顕宗は末寺も大石寺も、こんなろくでなしの坊主だらけだ。本妙坊の樽沢道広も強欲のクソ坊主で有名だ。」
 「卑しい“商売根性?甦歃个靴里笋弔世福?
 「『ボッタクリ』そのものだ」
 「『法を食らう餓鬼』そのものだな」

 だが樽澤住職が本妙坊の住職に就任したのは平成11年5月であり、平成6年(実際は7年)の葬儀当時、樽澤住職は本妙坊とは無関係であり、葬儀にもまったくかかわっていなかった。要するに「聖教新聞」の記事は、樽澤住職にとってまったくの事実無根のデマ。いまはやりの言葉で言えば「ガセネタ」だったのである。
 そこで樽澤住職は、平成16年3月、記事は名誉毀損であり、重大な人権侵害にあたるとして、東京地裁に前記の名誉毀損に基づく損害賠償と謝罪広告を求める訴訟を提起したのだった。

 これに対して創価学会側は、記事は日蓮正宗に対する「純粋に宗教的言論・論争の範疇に属する宗教的批判からされたものであって、社会通念に従って名誉毀損性の有無を論ずべき次元の批判・論争とは性格を異にしている」とか、秋谷会長、青木理事長、原田副理事長をはじめとする首脳幹部の発言は、「日蓮正宗及び同宗僧侶の行状に関して教義違背の指摘、宗教上の批判、論評を加えたものにすぎない」などと反論。
 口汚い表現についても、「仏法用語を使用するなどしたものであり、不当に原告個人に人身攻撃を加えるものでない」などと主張。また記事内容についても「真実であるか、真実であると信ずるにつき相当の理由がある」などとして原告の請求を斥けるよう求めていた。

 だが東京地裁民事18部は、記事は原告をして「不当に高額な戒名料を要求したりする、欲深い卑しい人間であるとの印象を」読者にもたせることは明らかであり、「原告の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損する」と名誉毀損性を認定。
 宗教的論争・論評であり樽澤住職個人を攻撃するものではないとする被告の主張にも理由がなく、記事の真実性や真実相当性についても「その重要な部分について真実であることの証明はなく、また、被告らにはこれを真実と信じたことについて相当の理由もないから、被告秋谷らが本件各発言をし、被告創価学会が本件記事を新聞紙上に掲載し、同新聞を頒布した行為は、原告に対する名誉毀損として不法行為を構成する」として、被告全員の不法行為責任を認定し、原告の樽澤住職に80万円の損害賠償を支払うよう命じた。

 人権を盾にして人権を侵害

 周知のように創価学会は、「言論による人権侵害を許すな」などと主張し、名誉毀損の損害賠償額の高額化や、名誉毀損罪の速やかな適用などを恒常的に訴えている。
 例えば平成13年12月21日付「聖教新聞」掲載の「名誉毀損賠償額の高さは『人権のバロメーター」「『賠償の高額化』は世界の潮流」と題する座談会記事には次のようにある。

 「原田(東京総合長)マスコミによる名誉毀損の話が出たが、欧米では、悪質な人権侵害に対しては数千万円、数億円の損害賠償金という例がざらだ。
 山本(九州長)アメリカでは報道機関が100万ドル(約1億2000万円)を超える賠償額を言い渡された例が、いくつもある。昨年と一昨年の2年間に限ってみても、10件もあったそうだ。
 秋谷 結局、賠償額の高さが『人権のバロメーター』になってきている。そういう時代だ。
 山本 その意味でも、日本は『後進国』だが最近は、ようやく、動きが出てきた。今年7月に判決の出た、有名女優の名誉毀損訴訟など、その象徴的な例だ。
 原田 東京高裁が、この女優を誹謗する記事を載せた雑誌社に対して、500万円の損害賠償金の支払いを命令した判決だ。
 山本 判決では、『慰謝料を軽く評価してきた過去の裁判例に拘束されるのは正義と公平の理念に合わない』『人格に配慮せず購買意欲をあおる週刊誌には多少の賠償の支払いでは違法行為の自制は期待できない』として、賠償額を『1000万円を下回るものではない』と算定していた。
 西口 要するに“一審判決の500万円ではまだ不十分である。1000万円は支払うべきだ”という判決だ。
 森田 手厳しいね。
 原田 結局、女優側が一審判決に不服を申し立てず、雑誌社も上告しなかったために、500万円の賠償金で決着したが、これが今の社会の流れだ。『賠償金の高額化』は、社会の趨勢だ。
 山本 最近では法律の専門家の間でも、賠償金を高くするべきだ、という声が多くなってきた。
 原田 たとえば東京高裁の判事を務めた聖心女子大学の升田純教授。『(低額の賠償は)名誉毀損の加害者に不当な利益を得させ、名誉毀損行為を促進する機能をもつことになり、社会的にも不当・違法な結果を誘発する』と論じている。
 山本 名誉毀損裁判に詳しい矢田次男弁護士等も『依然、加害者の名誉毀損行為を一般的に防止し、被害者の精神的損害を慰謝するとは言い難く、未だ慰謝料額が名目的な低額に失している』と訴えている。
 秋谷 まったく正しい。(中略)
 原田 いずれにしても、賠償額が被害に見合わないとの意見は、今年5月の衆院法務委員会でも出され、森山真弓法相も『全体的に低すぎる』と認めている。
 森田 公明党は『人権を守る』党だろう?だったら、こういう人権侵害のマスコミの問題こそ、もっともっと国会で追及してもらいたい。責任者を国会喚問して、厳しく問い質すべきじゃないのか。与党とも野党とも協力して、断固、戦ってもらいたい。
 秋谷 その通りだ。『言論の暴力』は、民主主義を破壊する元凶だ。『放置』は許されない。厳しく対処していくべきだ」
 判決に先立つ1カ月の2月6日付「聖教新聞」掲載の、「敗訴 断罪 賠償命令が続出する一部週刊誌の人権蹂躙」と題する座談会記事でも、秋谷会長と青木理事長はこう述べていた。
 「秋谷 事実無根のデマ!金儲けのウソ!絶対に放置してはならない」
 「青木(理事長)その通りだ。政治家、司法関係者が先頭に立って、高額化など罰則の強化を徹底すべきだ。それが市民の声だ。世界の大勢だ。時代の流れだ」

 こうした主張を恒常的に繰り返す一方で、自らは日蓮正宗僧侶の名誉を事実無根のデマで毀損していたのだから、その責任は重大である。ましてや公共性や公益性に基づいて、税法上の優遇措置などを受けている宗教法人それ自体や、宗教法人の代表役員が名誉毀損という人権侵害行為で不法行為責任を認定されたことの意味は重い。
 だが「聖教新聞」が同判決を1行も報じないことに象徴されるように、創価学会には名誉毀損行為を反省する姿勢はまったく見られない。
 反省するどころか判決後の3月16日付「聖教新聞」では、「『強欲のクソ坊主』『法を食らう餓鬼』の罵詈雑言で敗訴した『聖教新聞』」とのタイトルで、同判決の内容を報じる本紙発行人・乙骨正生の記事を掲載した「週刊新潮」を、「デマ新潮」「人権侵害誌」と罵っている有り様である。
 いずれにせよ、人権を最大限活用して創価学会に批判的な言論を封じ込めようと腐心する一方で、自らは創価学会に批判的な人物や団体を口汚く罵り続けている創価学会の反人権体質が、司法の場で厳しく問われたことの意味は大きい。

投稿者 Forum21 : 2006年04月01日 17:55

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