特集/韓国で策動する創価学会

韓国の大統領選にまで介入した創価学会
 ――韓国誌が創価学会政界工作をスクープ
/段 勲

 四月末日、ソウルから帰国したばかりの在日韓国人が、
 「韓国政界の中で、いま、ちょっと話題を呼んでいる記事があるんです」
 こう言って、カバンの中から一冊の本を取りだし、テーブルの上に乗せた。大きさやボリュームも日本の総合月刊誌程度で、表紙には「月刊朝鮮」(2002年5月号)とある。
 韓国の有力紙、朝鮮日報社が発行している月刊誌で、"韓国の文藝春秋"ともいわれる同国のオピニオンリーダー的な存在だ。
 秘密裡に行われた金・藤井会談  同誌、五月号(四月末発売)に掲載された一二ページに及ぶ話題の記事とは、タイトルが、
 「追跡 金大中30年の知己、日本人・原田重雄の証言 金大中・藤井富雄 秘密面談のミステリー」
 というもの。内容を紹介する前に、ここに登場する三人の人物について、ざっと紹介しておく。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との「太陽政策」等を打ち出し、一昨年、ノーベル平和賞を受賞した周知の金大中氏は、韓国の現職大統領である。
 1997年暮れ、四度目の大統領選に挑戦し、晴れて初当選(同国の大統領は任期が一期五年、再選は禁止)。2002年の今年末がその改選時期に当たっているが、金大中大統領と日本は因縁浅からぬ仲にある。
 野党の政治家として、韓国・朴政権に抵抗していた金氏は一九七三年八月、東京のホテル滞在中に同国の中央情報部員により拉致された。現在、上映中の話題映画「KT」は、この金大中拉致事件がテーマになっている。
 この時期あたりから、金氏の日本人支援者の一人として、長いつき合いを続けてきたのが原田重雄氏(70)である。
 東京・高田馬場駅前で「原田ビルディング(株)」を経営する原田氏は、多くの賃貸ビルを所有する資産家。与野党を問わず政治家の知人も少なくなく、子息を衆院選に立候補させるなど政治的関心も高い。
 原田氏のそうした政治家知人の一人に、公明党都議の藤井富雄氏(七八)がいた。創価学会草創期の幹部で、一九六三年、東京都議会議員に初当選以来、現在 c期目。都議会副議長、都議会公明党幹事長、同議員団長などを歴任。94年、公明結成に伴い党代表に就任。現在、党常任顧問。同党には、60歳定年制が敷 かれているが、80歳近くになってまだ議員を務めている藤井氏は、党内でも別格扱い。池田大作・名誉会長の覚えもめでたく、公明党の"最高実力者"ともい われている。
 この三人が絡み合う同誌本文の記事は、こんな書き出しから始まっている。
 「1997年の大統領選挙出馬を前に、金大中総裁が日本で秘密裏に公明党幹部と会った。李姫鎬女史も一緒にいた。金総裁は日本の公明党の影響下にある韓 国創価学会が自分を推してくれることを依頼した。韓国創価学会の会員は嶺南に多く住んでいるが、1997年の大統領選で、この地域で金大中候補が意外に多 くの票を得たのは、このためだという。この密談は、金大統領の長い知己である日本人、原田重雄氏が斡旋した」
 要するに、韓国の金総裁が、1997年の大統領選挙に立候補するにあたり、知人の原田重雄氏を仲介にして、公明党の幹部に韓国創価学会の支援を要請した、というもの。
 もし事実としたら、かなりショッキングな出来事である。日本の公明党という政党、創価学会という宗教団体が他国の主権にまで介入したことになるからだ。本文の続きを紹介する前に、ここで、韓国創価学会の実情についてふれておきたい。
 公称、800万世帯強という創価学会は、海外にも会員を擁している。外国の会員組織を総称して「SGI」(創価学会インタナショナル)と呼称。聖教新聞 等が報じるところによれば、SGIの勢力は180カ国を越え、会員数は百数十万人。その最高責任者が、池田大作・SGI会長である。
 早い時期から、音楽祭や鼓笛隊による街頭パレードなど派手な宗教活動を展開してきた米国・創価学会が、SGIの"総本部"と言われてきた。ところが、そ の米国が、公称会員数、二、三十万人といわれていた1970年代前半、隣の韓国では、すでに百万人の会員数を誇っていたといわれる。
 60年代初頭、在日韓国人の創価学員たちが訪韓し、鋭意、故郷で布教したのが始まり。当時、極貧の時代にあった同国で、
 「願えば、何でもかなう御本尊の功徳」
 が人気を博し、信者数が野火のように広まったのである。ただし、気性の激しい民族性も影響してか、その後、創価学会が日蓮正宗・総本山とトラブルを起こ すたびに、韓国の組織は四分五裂。現在は韓国創価学会(KSGI)を最大勢力にして、日蓮正宗を源流にした組織は、五派から10派にも分かれて活動をして いるといわれている。
 そのなかで、注目のKSGIは現在、公称信者数を120万人と発表しているようだが、一方韓国マスコミ人の見方では、
 「だいたい、KSGIの勢力実数は40万人前後」
 と、推定している。

 創価学会に支援要請した金大中氏

 さて、「月刊朝鮮」の記事に戻って、金大中氏が原田氏を介して公明党の幹部に会った時の模様を、原田氏の証言としてこう書いている。
 「金大中総裁から『どうにかして頼んでくれ』と、連絡があった。大統領選の一年前ころ、金総裁が訪日した。金総裁が韓国に帰る日の朝早く、八時に会っ た。原田マンションの私の事務所で会った。公明党の首脳は、衆人の視線に触れぬよう、裏口からこっそりと入ってきた。(そこで)私と金総裁夫妻が、公明党 の首脳と会った。会ったのは一回」(要旨)
 その公明党の首脳とは、藤井富雄都議であったことを明かす。
 同誌では、藤井富雄なる人物像を詳細に紹介した後、記事は核心に触れていく。
 「最初の話題は宗教関係だった。(公明党が)『日本にはいろんな種類の宗教がある。宗教同士が対立してはだめだ。宗教が願うことは平和だから』というや りとりのあと、『応援しよう』と、言った。……公明党は秘密を守ってくれと、要求した。公明党とはうまく話がついたと私が言った通りに事が運んだので、金 大中氏は安心していた。金総裁は、日本に特使を送ると言った」(要旨)
 さらに、
 「――金大統領本人も公明党の協力がなければ落ちただろうと認識しているか。
 『当然そうだ。100%、300%分かっている』。
 ――公明党の立場として、隣国の大統領選挙に介入したという事実が明るみに出れば、困るだろう。
 『公明党、創価学会は沈黙を守った。なぜなら、日本の政党が隣国の大統領選挙に介入したとか、宗教団体が支援したという世論が起こればうまくないから、一切、黙っている』」
 このあと記事は、韓国創価学会の実態に言及。ソウル、京畿など二九方面と102の圏組織があり、会館数は全国に260カ所などと紹介した後、韓国創価学会の代表、呂相洛理事長に一問一答のインタビューを試みている。
 日本の公明党と日本の創価学会の指示で、金大中候補を支持したかの質問には、
 「そんなことはあり得ない。我々は個人的な信心を通じて自己の幸福を追求する団体で、政治に関与しない」
 と、否定していた。
 一方、この「月刊朝鮮」の記事は、日本のマスコミも注目した。まず、藤井富雄都議は、一部マスコミの取材に応じて、原田氏の仲介で金氏と面会した事実は 認めたものの、金氏の選挙支援は全面否定のコメント。さらに、同記事の核心部分を証言したことになっている原田氏の方は、心境がより複雑のようである。
 「月刊朝鮮」側によると、原田氏のインタビューは録音をしているというが、同氏は、親しいマスコミ関係者にこう語っているという。
 「今年の三月だったか、私の知り合いである韓国人が友人と名乗る人を一人連れて会いにきた。別にそのとき、取材とは思っていなかった。話した内容についてはノーコメントである」
 真相を知りたい。

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