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2010年08月06日

2010-8 特集/創価・公明敗北――参議院選挙の結果から見えるもの

また、激しい「コウモリ飛行」を始めるであろう「公明党=創価学会・池田大作」

古川利明
ジャーナリスト

 腰砕け民主の一人負け

 今度の参院選は、政権与党である民主党が、改選議席の54を大きく下回る44議席しか獲得できず、惨敗を喫した。非改選分の62議席と合わせてもトータルで106しかなく、現在、連立を組む国民新党(3議席)と合わせても過半数(122)には遠く手が届かない、「衆参間のねじれ」が、再び現出することになった。
 民主党の敗因は、既に語り尽くされた感もあるが、首相・菅直人の、余りにも唐突な「消費税増税発言」に尽きるだろう。あっさり言ってしまえば、今度の参院選は「民主の腰砕けによる、一人負け」であって、公明党(=創価学会・池田大作)をはじめとする他党が「勝った、勝った」とおおはしゃぎして、浮かれている状況ではないだろう。
 そこから、今度の参院選の結果を見ていくと、自民党は51議席を獲得し、選挙区の1人区では「21勝8敗」と圧倒したものの、比例では民主に次ぐ「第2党」に甘んじ、比例での獲得票数・議席数とも前回(07年)より落とし、1407万票(12議席)にとどまっている。
 また、渡辺喜美率いる「みんなの党」は、比例では公明を上回る794万票をはじき出し、選挙区当選組(3議席)と合わせて10議席を獲得した。参院選初登場で、いきなり、2桁の議席確保であるわけだから、「大勝利」であることは間違いない。ただ、「小鳩ダブル辞任」による「看板の架け替え効果」で、民主に戻りかかっていた大量の無党派層が、あの菅の「消費税増税発言」に幻滅し、「だったら、主張がまだ、比較的、ハッキリしているんで、物は試しに1回入れてみるか」というのが、大勢だったのではないだろうか。
 それゆえ、「風によって、また、いくらでも投票先が変わる」ことが予想されるため、今度のみんなの党の集票力が、今後の国政選挙でも継続するかどうかは、保証の限りではない。

 「比例は負け」の公明党

 そこで、公明党(=創価学会・池田大作)である。
 今回、公明党は、比例で763万票を獲得して6議席、選挙区では、東京、大阪、埼玉の3つで当選を果たし、合計で「9議席」だった。今回、改選が「11議席」だったわけだから、それを2つも下回っているわけだから、「勝利」とは到底、呼べないだろう。
 ただ、もう少し、細かく見ていくと、まず、選挙区だが、当初の世論調査では、東京はともかく、大阪、埼玉では劣勢が伝えられていたにもかかわらず、蓋を開けてみれば、「3人全員当選」、特に、定数3の大阪ではトップ当選だったわけだから、去年夏の総選挙で「小選挙区全滅」という屈辱的惨敗からすれば、何とか「老舗の第3党としての面目を保った」というところだろう。
 しかし、比例は、前回(07年)の776万票を、13万票だが下回り、獲得議席も「6」にとどまっている。今回、比例の改選議席が「8」だったことと合わせても、そこから、今回は2議席も落としているわけだから、比例では「敗北」である。
  地方レベルでは、例の「自公間の選挙協力」を温存したということで、「選挙区では自民に回す代わりに、比例では公明に入れてもらう」として、7月13日付日経新聞朝刊によれば、「九州・四国で獲得した票のうち、約1割が自民支持層だという」と紹介している。全体で、どのくらいの票数が、自民支持層が公明に投票してくれたかは不明だが、今回、改選を迎えた議員の選挙があった6年前(04年)は、公明は比例で862万票もはじき出しているのだ。
 自公連立を組むまでの創価学会の集票力は、「700万票台」、具体的には「700万票台半ば」が、せいぜいだった。しかし、その後、例の「自公選挙協力」によって、信濃町サイドは、自民党議員らの後援会名簿を出させ、そこに集中的な「F票取り」をかけることで、衆院とも合わせ、国政選挙では、比例では100万票を超える上積みを果たし、「第3党の座」を死守する原動力となってきたのである。それで考えると、今回の比例での「763万票」というのは、「自公連立以前」の獲得票数に戻っただけのことである。
 逆に言えば、自公間の選挙協力をやって、これだけの票数しか出ていないのであれば、「信濃町単独での集票力が低下している」と言っているようなものである。そこも含めて、今度の参院選では、信濃町は「比例は負け」というべきであるが、しかし、選挙区で3戦全勝したことで、その分を相殺した形になっている。その意味では、去年の衆院選を機に、全体の流れとしては低落傾向にはあるものの、「それでも、土俵際で、何とか踏み止まった」とはいえるのではないだろうか。

 「政権与党狙い」の本能でコウモリ飛行

 そこで、再び、「ねじれ」を迎えた国会における公明党(=創価学会・池田大作)の対応だが、現時点では、9月に行われる民主党代表選で、菅が再選される保証はどこにもなく、「誰」がなるか分からない段階で、はっきりとした予測は難しい。ただ、それでも公明党が、再び「激しいコウモリ飛行」を始めるであろうことは、ほぼ疑いないと思われる。
 というのは、池田大作の「天下取り」の根幹にある「総体革命」に集約されているように、「政権与党に入って、そこに居座り続ける」というのは、彼らの基本戦略というよりは、「本能」といっていい。ところが、菅の「消費税増税発言」が、国民の猛反発を買ってると見るや、「国民裏切る菅政権 公約違反の消費税上げ」「菅政権にレッドカード」(6月21日付公明新聞1面)と民主批判(正確には「菅批判」だが)のトーンを激化させている。その姿勢は、選挙後も継続してはいるものの、その一方で、代表の山口那津男が「(参院議長は)原則は比較第1党(の民主)が要職を占めるのがルール」と発言したことに、みんなの党代表の渡辺から「(公明党は)与党ボケしている」と噛みつかれたことに象徴されるように、さっそく、「コウモリ飛行」を始めている。
 秋の臨時国会以降、民主党から誰が、首相に選出されようとも、当面は、政策ごとの「部分連合」を模索していくことになると思われる。おそらく、「消費税増税」については、しばらく封印されるだろうが、さしあたっての重要法案になると思われる「郵政再国営化」「労働者派遣法改正」「公務員制度改革(人件費カット)」「高速道路無料化」については、「自民」と「民主」との間では、大きな隔たりがある。とりわけ、今回、大躍進した「みんなの党」は、財政・経済政策では、「小さな政府路線」を志向しているため、むしろ、自民党と共通する部分が多い。
 おそらく、ここらあたりから、「コウモリ」が「自分を高く売れる」と踏んで、見た目には、激しいジグザグ飛行を演じることで、民主サイドに揺さぶりをかけ、そこから「家の中」、すなわち、「政権与党」に入り込もうと、虎視眈々と狙っているのではないか、というのは十分に予想がつく。
 とりわけ、今、思い出されるのは、98年夏の参院選で、自民党が大惨敗を喫し、参院での過半数割れがさらに拡大した時のことである。責任を取って橋本内閣は退陣、後継には同じ経世会から小渕恵三が就いたが、このとき官房長官だった野中広務が自ら「国対」を主導する形で、当時の「小沢自由党」をクッションにした「自自公連立」へと持っていった。
 その根底にあったのは「切符はバラで買うより、定期がいい」という、単なる「数合わせ」でしかなかった。そうした「理念なき野合」の結果が、この「失われた10年」であったことを、我々は決して忘れてはならない。
 それゆえ、本誌をはじめとするジャーナリズムに必要なのは、再びキャスティング・ボートを握った公明党(=創価学会・池田大作)に対する、厳しい監視と適切な批判の継続である。それなくして、「この国の政治の真の民主化」はありえないと断言しておく。(文中・敬称略)

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。著書に『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』(いずれも第三書館刊)など。

投稿者 Forum21 : 2010年08月06日 02:16

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