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2010年03月17日

2010-3 特集/検証・池田大作の核廃絶提言

大論考「SGIの日」記念提言と本部幹部会スピーチ代読の実像

段 勲
ジャーナリスト

 言行不一致の「核廃絶」主張

 毎年、「SGI(創価学会インタナショナル)の日」(1月26日)を記念し、池田大作・SGI会長が提言する中身には、いつも感嘆をさせられてしまう。
 第35回を迎えた今回の「SGIの日記念提言」は、メインタイトルが「新たなる価値創造の時代へ」である。聖教新聞紙上では1回では掲載し切れず、2日にもわたって掲載された大論文だ。
 原稿用紙にしたらおよそ100枚にも及ぶと思われる大論説の山場は、「核廃絶」である。見出しだけを紹介すると、?牾吠軸錣了藩僂鮴鐐菷蛤瓩麿癪犢?島と長崎で『核廃絶サミット』を開催?癪狎椎?の力で核時代に終止符を?瓩函∩農欧蕕靴つ鷂世?続く。
 ごく一部の国を除けば、核廃絶は世界中の願いである。池田氏の提言に反対するようなへそ曲がりはいない。ただ、経済発展が著しいお隣の中国では、1964年から1996年の30年間で、45回を数える核実験を繰り返してきた。
 中国要人とことに親しい池田氏は、国家首脳たちと何度もお会いし、そのつど世界平和に関する意見を交換している。その間、「核実験をやめてください」と、進言し、あるいは文書で訴えたことが一度でもあったのだろうか。
 SGI提言は、この核廃絶に続き、世界が抱える経済危機、科学技術の問題、雇用政策、子どもの平和、女子教育の拡充等にもふれ、世界諸国の著名人たちの言動を引き合いに出しながら提言を組み立てている。
 さすが、世界中から抱え切れないほどの勲章や、各大学から名誉教授号が贈られてきた池田氏である。その博識ぶりには驚愕し、さらには生殖系列遺伝子操作にまで言及するなど、最新の医学研究まで一言を持った論文になっている。
 足元にも及ばない知識の奥深さ。こうした高尚な提言を読みこなすなどとても出来ないが、未熟な読者と先に断ったうえで、素朴な疑問を3点ほどあげてみたい。

 財務を取り立てつつ「強欲資本主義」を批判

 「世界同時不況」の原因として、池田氏はこう喝破している。
 「昨今指弾されている『強欲資本主義』などは、その末期症状といってよい。欲望や知能の独り歩きであり、そういえば、今回の金融危機を招いた信用バブルの背景には、投機性を至上視したデリバティブ(金融派生商品)市場の拡大などがあり、その開発には最先端の金融工学が駆使されていたという。金融市場のカジノ化に熱中した人たちの脳裏に、果たして『何のため』という問いが浮かんだでしょうか」
 まさに正鵠を得た指摘だ。今回の世界同時不況の理由として、似たような分析を行っている経済学者も少なくない。しかし、かつて創価学会も、株に投機していた事実は消せない。信者を強化育成することを目的にした宗教法人が、信者から集めた金で株に手を出す。これは「強欲資本主義」に当てはまらないか。
 加えて例年、年末に実施されている「財務」や「広布基金」はどうだろうか。池田氏は、厳しい不況下に現金を出すことが、
 「世界一の王者のごとき境涯になれる」(「聖教新聞」09年12月1日付)
 と、会員に説いた。生活が豊かな会員家庭ならまだしも、一様に納金させて、果たして何人の学会員が世界一の王者になれるのだろう。
 池田氏が、毎年、会員に、学会の収支決算を1円まで報告し、
 「来年は職員の給料や会館の建設資金としてこれだけの金が不足になります。会員の皆様にご協力をお願いしたい」
 と訴えるのなら、金集めもまだ理解もできる。だが、ただ闇雲に金を集め、本人は高級乗用車を乗り回し、風光明媚な場所に研修所を建設。豪華な池田専用施設を造った。国会議員が調査に乗り出し、マスコミ等に批判されると、研修所内のプールや岩風呂、日本庭園を一夜にして取り壊す。造るも壊すも会員たちの大切な浄財だ。出費してきた会員に、1度でもお詫びしたことはあったのか。これこそ宗教家の「強欲資本主義」である。

 聖教新聞にはゴシップ記事も捏造もない?

 素朴な疑問の2つ目は、「聖教新聞」を自画自賛したくだりだ。
 「若いジャーナリストが、全財産をはたいて良質の新聞を発刊。悪戦苦闘の結果、10号で廃刊。その時、彼は、友人に言われたそうです。
 『君の新聞には、ゴシップ記事もなければ、面白く仕立てた、うわさ話もない。――殺人事件もないじゃないか。だれが、そんな新聞を買うと思う?』と。
 アイトマートフ氏(ロシアの作家、故・チンギスアイトマートフ氏)は続けました。『その反対が、創価学会の機関紙「聖教新聞」です。同じように、ゴシップ記事も、捏造も何もない。きわめて高い文化的な内容です。なのに、ずうっと発刊され続け、何百万という方々が読んでいる。これは、大変なことです』と」
 池田氏は、アイトマートフ氏の話をこう紹介し、聖教新聞を称賛した。筆者は、海外を含め、日本の各宗教機関紙(誌)を読んでいるが、どの宗教機関紙(誌)にしても聖教新聞と同じように、ゴシップ記事や捏造などは書かれていない。発行部数の差はあれ、例外なく聖教新聞と同じように、教団の最新ニュースを取り混ぜながら、「わが宗教はいかにすごいか」を書いて発行し、会員に読ませているだけだ。なにも聖教新聞だけが、「大変なこと」ではない。
 ただ、アイトマートフ氏が、「聖教新聞には捏造がない」と、語っていたとされるが、そうだろうか。ほんの一例をあげれば、本誌先号(2月号)の特集で、発行人の乙骨正生氏が「東京国税局の税務調査問題 虚偽だった聖教記事と国会発言」を書いていた。こういう聖教記事を「きわめて高い文化的内容」というのだろうか。

 スピーチ代読の池田氏に大論文が書けるのか?

 素朴な疑問3点目は、記念提言の中で池田氏は、得意の「宗教問題」について触れ、こう提言している。
 「時代を開き、価値を創造しゆく“発条(ばね)”となり、エネルギー源たりうるものこそ、宗教であるというのが、私どもの変わらざる信念であります。科学的知見と真正面から向き合い、懐深く包み込みながら、人類を破滅させかねない先端技術の暴走を制御していく『ハンドル』『ブレーキ』の役割を演じる宗教パワーこそが要請されている」
 とし、アインシュタイン、加島祥造氏(詩人)、ニーチェや、仏典からの言葉を引用した。宗教家、池田氏の原点は、周知の通り、日蓮聖人の教えにあると思うが、「真の宗教」を語る提言場面で、加島祥造氏の言葉を用いても、日蓮の「に」の字も出てこない。なにかわけでもあるのだろうか。
 さて、長い「SGI記念提言」を、ようやく読み終えたところで、1本の録音テープが手元に届いた。2月6日、創価学会が開催した「第37回本部幹部会」の模様である。毎月1回開催される本部幹部会は、創価学会にとっては最重要行事。当然、最高指導者の池田名誉会長も出席してスピーチを行う。
 でも、82歳という高齢が次第に妨げになってきているのか、このところスピーチも、最初の部分だけ話し、残りはもっぱら側近幹部に代読させてきた。この2月度の本部幹部会などは、
 「はい、長谷川一夫(故人、有名俳優名)」
 などと言って会場の笑いを誘い、冒頭から側近の長谷川重夫副理事長に代読させていた。
 30分ほどのスピーチさえも他人任せという衰えた体力で、一転、膨大な資料を収集、熟読し、あの大論文「SGI記念提言」の草稿をまとめることができるものだと感嘆させられる。

段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)『定ときみ江 「差別の病」を生きる』(九天社)『鍵師の仕事』『高額懸賞金付き!未解決凶悪事件ファイル』(共に小学館文庫)など著書多数。

投稿者 Forum21 : 2010年03月17日 07:55

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