« 2009-8 信濃町探偵団―創価学会最新動向 | メイン | 2009-8 »
2009年08月10日
2009-8 特集/見果てぬ夢の崩壊……都議選そして衆院選
選挙結果は池田創価学会倒壊の前触れ
進行する創価学会=公明党の腐朽
ジャーナリスト 溝口 敦
組織票の限界示した都議選、総選挙で壊滅の危機
7月12日投票の都議選で公明党は立候補した23人が全員当選し、創価学会は一応選挙結果を「勝利」と自賛している。
〈公明党は見事に全員当選を果たした。僕の友人の新聞記者も「奇跡的な勝利だ。すごい底力だね」と驚愕していた〉(男子部長・棚野信久談、「聖教新聞」09年7月20日付)
都議選は一人区を除き同一選挙区で複数の候補が当選する中選挙区制だが、8月30日投票の衆院選は小選挙区制である。得票数トップでなければ当選はあり得ない。
しかし都議選42選挙区の中でトップ当選を果たした公明党候補はわずかに2人だけ。しかも今回の投票率は54・49%、前回05年の43・99%を10ポイント以上も上回った。高投票率の中、公明党は逆に得票率を減らしたわけだ。浮動票が見向きもしない政党だから、得票率のダウンは当然である。
公明党が候補を立てた選挙区での得票率は前回の24・74%から18・4%にダウンし、わずかに前回並みの得票率を維持したのは世田谷区と豊島区、上回ったのは葛飾区だけだった。投票率の高まりが公明党に不利に働いたわけだが、全体の得票数も前回に比べ4万2865票も減らしている。
つまり創価学会=公明党は目一杯頑張ったものの、これ以上伸びようがないという組織戦の限界を示したのが先の都議選結果だったろう。F票取りに動員された学会員は疲労困憊しているはずである。こうした結果を8月30日投票の総選挙に延長して考えれば、公明党の惨敗はほぼまちがいない。
創価学会は政教一致の批判を顧慮する余裕もなく「聖教新聞」7月22日付で〈衆院解散 公明党、大勝利へ出発〉〈太田代表 国民の生活を守り抜く〉と大見出しを立て、公明党の第一次公認候補(小選挙区8人、比例区27人)を顔写真入りで学会員に紹介した。自民党も21日、公明党の小選挙区候補8人全員の推薦を決定したが、自公の選挙協力が実を結ぶ可能性は限りなく低い。
『週刊現代』8月1日号は全選挙区当落予想〈自民78議席、鳩山民主332議席〉と大胆に予測して読者に衝撃を与えたが、壊滅の危機に晒されるのは自民党だけでなく、公明党も同じである。自公連立による悪政が国民の今の閉塞状況に直結している以上、少数党への転落は自民党だけと考える方がおかしい。
予想される党首脳の苦戦
まず小選挙区を見れば、兵庫8区(尼崎市)の元国土交通相・冬柴鐵三に対して、新党日本代表の参院議員・田中康夫が民主党の支援を受けて出馬する。田中康夫の知名度は高く、同区が全国屈指の激戦区となるのは必至である。
〈与党への逆風が強まる中、冬柴氏自身が「多選と高齢もあり、これまでで一番厳しい選挙」と警戒を強めている。公明党県本部の野口裕幹事長は「向こうが空中戦なら、こっちは地上戦。田中氏には確かに知名度はあるが、地域に密着し、かかわり続けてきた自負が冬柴にはある」と早くも対抗意識むき出し〉(「産経新聞」09年7月17日付)
田中康夫は尼崎市で遊説を始めたが、窓にフィルムを貼った「私設警護車」が複数台、田中の車を追尾し、「アマに何しに来たんやっ!」と罵声を浴びせ、信号待ちではクラクションを鳴らし続ける「歓待」に出たという。創価学会員が早速、嫌がらせに出たことは容易に想像がつくが、それだけ公明党=創価学会の危機感が深いのだろう。彼らにすればなりふり構わぬ妨害に出るしかない。
東京12区(北区全域と足立区西部)の公明党代表・太田昭宏に対して、民主党は7月24日、テレビ朝日『トゥナイト2』で名を売った参院議員・青木愛を当てた。民主党代表代行・小沢一郎は青木愛の出馬について、「(ほかに)いい人材はいたが、なかなか決断できない中で、絶対に勝てる候補者として最終的にお願いした」「太田さんはそんなに強い候補だとは思わない」と述べた。
青木愛の陣営は擁立発表直後の2日間で東京12区全域に青木のポスターを貼りめぐらせた。
〈青木陣営には小沢の秘書軍団が入り、陣頭指揮を執っているというから、ポスターの一斉張り出しなんて朝メシ前なのだろう。今後も、ドブ板の辻立ちなど、小沢流戦術を仕掛けてくるはずだ。
「小沢本人じゃなくてよかった」と公明党が安堵したのも束の間。このポスター爆弾を見たら、東京の公明・学会の運動員は12区に張り付かざるを得ず、自民党の応援をしている余裕はない。公明票依存の自民党にも、大ダメージだ〉(「日刊ゲンダイ」09年7月28日付)
公明党幹事長・北側一雄が立つ大阪16区では民主党の森山浩行が善戦、北側票に肉薄している。公明党は苦戦の予想に浮き足立ち、さすがに党代表と幹事長は落とせないと、太田昭宏と北側一雄について比例区との重複立候補を30日検討し始めた。
貧すれば鈍す――こじれる自民党との関係
公明党は2000年の衆院選で東京など4ブロックで6人を重複立候補させ、比例区で2人を復活当選させたが、その後は「重複だと小選挙区での動きが鈍る」として重複を禁じてきた。しかし民主党への追い風と自民・公明への逆風の強さに、自ら課した禁じ手を解除しようとしている。
公明党が太田昭宏以下8人を立てた小選挙区の情勢は極めて厳しく、全滅もあり得る苦境にある。比例区でも自民党との票のバーターが機能する可能性は薄く、両党とも負け戦に浮き足立ち、わが身を守るのに精一杯、他党に恩を売る余裕はない。
たとえば千葉県である。自民党千葉県連の田久保尚俊幹事長が7月28日、公明党千葉県本部に対し、県内13小選挙区候補者への推薦を要請したところ、公明党県本部側は一括推薦を渋り、各小選挙区ごとに5000票の比例票を公明党に回すよう求めたという。
〈自民党千葉県連の党員は約2万人で、全小選挙区で公明党の推薦を受けるためには、比例代表で党員数の3倍以上の票を回すことが必要です。(略)公明党側の露骨な要求に、自民党支持者から批判の声があがっていることも認めています〉(「しんぶん赤旗」09年7月30日付)
13小選挙区で各5000票ならば、全部で6万5000票必要である。だが、千葉県に自民党員は2万人しかいないのだから、自民党が名簿つきで「比例区は公明党に」と約束できるはずがない。公明党の貪欲さが度を越し、自民党との関係がこじれている。
公明党千葉県選対委員長・吉野秀夫は自民党に「具体的な協力を約束してもらえないと、こちらの支持者らも『何だ』となる。県内からの一次推薦(8月中旬までに出す)は1人程度にとどまるのではないか」と話したという(アサヒ・コム千葉 7月29日)。
おそらく全国でも同じような紛争が発生しているはずである。自民、公明は互いに「貧すれば鈍す」で猜疑心を抱き合い、選挙協力はご破算、裸の基礎票で勝負しなければならない公算が強い。
比例区でも化粧っ気なし、やせ細った学会員票がそのまま露呈しよう。結果、創価学会=公明党は総選挙に敗北して下野するのは当然としても、その後も公明党が復活する目はないだろう。
なぜなら今回の総選挙は戦後体制に最終的に幕を引くはずだからだ。選挙で自民、民主の二大政党制が定着し、今回以降は劇的に政権交代が起きるというストーリーより、選挙後に特に自民党に分解、組み替えが起き、政党の再編成が進む中で創価学会=公明党は埋没していくというストーリーの方が現実性が濃い。栄華を極めた官僚制と同様、創価学会=公明党も腐朽が進み、選挙結果が池田創価学会の倒壊を前触れすることになろう。
彼らの断末魔を眼前に見る喜びは、断じて学会を批判しつづけてきたわれわれのものである。(文中・敬称略)
溝口 敦(みぞぐち・あつし)1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務を経てフリージャーナリスト。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞を受賞。『堕ちた庶民の神』『池田大作創価王国の野望』『オウム事件をどう読むか』『宗教の火遊び』『チャイナマフィア』『あぶない食品群』『細木数子 魔女の履歴書』など著書多数。
投稿者 Forum21 : 2009年08月10日 00:43
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.forum21.jp/f21/mt-tb.cgi/197