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2009年07月14日

2009-7 特集/宗教法人の公益性とは

矢野元公明党委員長が国会で講演
創価学会の公益性・適格性に疑問符

ジャーナリスト 乙骨正生

 国会で矢野氏が講演

 矢野絢也元公明党委員長から創価学会・公明党の実態や、矢野氏が提訴している創価学会幹部・公明党国会議員OBらによる人権侵害事件についての経過や事実を聞くための、野党の国会議員有志主催の「続『矢野絢也さんより話を聞く会』」が、7月1日午後4時から参議院会館第1会議室で行われた。
 これには呼びかけ人の菅直人民主党代表代行や亀井静香国民新党代表代行、石井一民主党副代表、自見庄三郎国民新党政調会長をはじめとする約50名の衆参両院議員が出席。矢野氏の講演に耳を傾けるとともに、活発な質疑応答を繰り広げた。
 会合では、はじめに呼びかけ人を代表して菅・亀井の両代議士が、大要次のように挨拶した。

菅直人民主党代表代行
 昨年6月13日に、1回目といいますか、矢野絢也先生にお出ましを頂いて話を聞かせていただきました。大変ショッキングといいましょうか、まさに矢野先生ご自身が、直接にいろいろ体験されたことをお話いただきました。それから約1年が経ったわけですが、その間に、大変、大きなできごとがあったことは、皆さんも、もうご承知のことと思います。
 つまりは矢野さんをめぐる裁判において、一審では、相手側といいましょうか、公明党あるいは学会側が100パーセント勝訴していたものが、東京高裁において逆に矢野さんの側の100パーセントの勝訴。しかも私も判決文などを取り寄せて読んでみますと、証拠とされたいろいろないわゆるテープレコーダーに記録されたものを、相手側がいわばそれを捏造といいましょうか、編集し直してですね、本来、あるべきものを抜いたりしてですね、それを真実のものだといって提出をした。それに対してもこれは捏造のものだと言うことまで、明確にその判決の中で高裁が認定をしている。そして問題の手帖も返却するようにと、そういう中身の、100パーセントというよりは1000パーセントといっていいような判決が出されたということも、皆さまご承知だと思います。(中略)また私達もしっかりお話を受けて、それぞれの立場で、この問題を看過させることが出来ない問題として取り組んでいきたい。

亀井静香国民新党代表代行
 今日は、矢野先生からあの判決を踏まえてのお話をいたしてしていただけるということでありますけれども、私、予算委員会でも強く指摘をしたわけでありますけれども、公党の委員長を長くお務めになられた方に対して、ま、言論封圧、また犯罪行為に及ぶようなことが、宗教団体によってなされておるとすれば、これは由々しき問題であって、そういうことについて、やはり私ども政党人としても、これは看過することが出来ない問題である。

 この後、矢野氏が約30分にわたって講演。その中で矢野氏は、いわゆる創価学会青年部幹部や首脳幹部による言論封殺を伴う人権侵害の事実経過や、公明党国会議員OBによる手帖強奪の経過、さらには機関紙誌を使っての創価学会の攻撃の実態などを説明するとともに、強奪された手帖には、公明党の書記長として自分なりに創価学会のために良かれと思って行った、「犯罪的行為」や「職権を利用しての行為」などがるる記載されていると発言。
 具体的には田中角栄元首相との関係、三木おろし、大平内閣40日抗争など、政界の節目節目で見聞した詳細な事実をはじめ、「これが俺のやったことかいな」と思うような創価学会のために動いた言論出版妨害事件や創価学会と共産党との10年協定問題、日蓮正宗との第一次・第二次の対立紛争、池田大作氏の女性スキャンダルが問題となった月刊ペン裁判対策、富士宮市百条委員会対策、山崎正友元創価学会顧問弁護士対策、ルノワール疑惑、1億7千万円金庫事件、平成2年・3年の国税庁による創価学会への税務調査などの諸問題について、創価学会首脳から依頼された内容や、依頼を受けて「創価学会のために」動いた活動の詳細、そして「天下を取れ」「政権を取れ」「力が正義」などの公明党首脳に対する池田氏の日々の指導などが記載されていることを明らかにした。
 その上で、先の東京高裁判決では、公明党国会議員OBによる手帖強奪に「創価学会が関与していているということ」を、公明党国会議員OBらが「明示的に、あからさまに、あるいは暗示的に、遠回しに学会の関与をちらつかせながら、私を威迫した」と判示しており、創価学会も手帖強奪に関与してないとはいえないと強調。創価学会との裁判も粛々と戦っていきたいとの決意を披瀝した。

 手帖の返還を拒否

 ところで先の判決で東京高裁は、公明党国会議員OB3氏に対して手帖を矢野氏に返還するよう命じるとともに、最高裁で判決が確定する前であっても矢野氏が手帖の返還を求めることができるとの仮執行の権利を認めた。これに対して矢野氏は、代理人弁護士を通じて公明党国会議員OB側に、矢野氏側が強制執行をかける前に自主的に返還するよう求める内容証明郵便を発送したところ、公明党国会議員OB側の代理人弁護士(創価学会副会長)から「返還の意志はない」との回答が寄せられた事実を明らかにした。
 裁判所の判決に反し、返還に応じようとしない遵法意識に著しく欠ける、公明党国会議員OBと創価学会幹部弁護士の対応について矢野氏は、国法よりも重要視せざるを得ない「どこからか返すなという命令が出ている」のかもしれないとの感想を述べた。
 その上で、昨今の創価学会・公明党の動きに言及した矢野氏は、組織の都合で政治を壟断しているとして、「組織防衛や組織維持、宗教的価値観を政治に持ち込んでいる」と批判。亀井静香氏や民主党を「仏敵」などと呼び、対立候補の打倒を叫ぶのはその象徴であり、本来、政策面からパワーアップを図るべき選挙のエネルギーを、宗教的価値観や宗教的憎悪に依拠しており、こうした「宗教という絶対的価値観で、政治という相対的価値観を支配するあり方は、政教一致といわざるをえない」と、昨今の創価学会のあり方を批判した。
 この後、会合は参加した国会議員との質疑応答に移り、多くの国会議員から、創価学会の総体革命戦略、公明党が参院法務委員会の委員長ポストを独占している理由、司法界における学会員の分布図、創価学会の警察・マスコミへの浸透度、税務調査時における創価学会の依頼内容、幸福実現党の出現について、などのさまざまな質問が発せられた。

 池田個人会計を死守

 このうち矢野氏は、平成2年・3年の創価学会に対する国税庁の税務調査時における創価学会の依頼について、創価学会の副会長を務める弁護士から直筆で4項目の依頼があったと次のように説明した。
 まず第1は、創価学会が毎年末に実施している財務(寄付)における大口献金者のリストは、個人のプライバシーを盾にして絶対に出さないこと。国税当局は、創価学会員で事業を営んでいる人物の税務調査によって、創価学会に多額の財務納金をしている事実を把握。納金額が事実かどうかを確認する反面調査をしたいので献金リストの提出を求めたという。これに対して創価学会は、個人のプライバシーと信教の自由を盾にしてリストの提出を断固拒否。矢野氏もその線で国税と折衝し、結局、リストは出さないですませたとのこと。しかし、平成7年に行われた宗教法人法改正の目的は、宗教法人の財務会計の透明性を確保することに置かれていることから、この点は宿題として残されていると、矢野氏は指摘。
 創価学会の依頼の第2項目は、美術品の現物調査を拒否することだったという。これは創価学会の財産目録を提出するかどうかの問題になること。さらには名簿に記載されていない幻の美術品の所蔵の有無に関わることでもあったため、拒否したが、結局、曖昧な形で処理されており、これも宿題として残ると矢野氏は指摘した。
 3番目の依頼項目は、池田名誉会長の秘書業務を担当する第一庶務の経理にはいっさい触れさせないということだったという。第一庶務の経理は、非課税措置がとられている宗教法人の公益会計部門に含まれていたため、創価学会側は、なぜ、公益会計に踏み込むのかといって拒否したという。これに対して国税当局は、源泉徴収は課税も非課税もないので調べるとして、第一庶務会計のかなりの部分に踏み込み、源泉徴収を根拠に、あれもおかしい、これもおかしいと指摘したが、最終的に大事な部分は踏み込ませなかったと矢野氏は説明。これも重要な宿題だと発言した。
 そして第4番目の項目は、池田名誉会長の個人所得の調査を防ぐこと。矢野氏はこの点について次のように説明した。
 「4番目は池田名誉会長の個人所得。ハッキリ言うと公私混同の実態というところでございますが、これはもう必死の防戦をいたしまして、そういうところには、ま、多少は必要なところには触れましたが、ま、関係はないという話で、言葉の説明で済ましたように、私は記憶しております。ま、そういうこと、こういうこと、全部、手帖返してもらったら、詳しく書いてあるわけです」
 宗教法人として公益性を尊重されて税法上の優遇措置を受けている創価学会。だが平成2年、3年にわたる国税庁の税務調査に際して、創価学会は、矢野氏に対して上記の4項目についての税務調査の拒否を要請したという。
 矢野氏は、一連の問題を踏まえて、創価学会の宗教法人としての適格性には疑問符がつくと指摘。自らと創価学会との訴訟も、創価学会の宗教法人としての適格性を問うものと位置づけた。
 創価学会と公明党の実態を赤裸々に語った矢野氏の講演と質疑によって、多くの国会議員が、創価学会・公明党についての認識を深めた。この後、呼びかけ人の一人である石井一民主党副代表が「この問題は非常に国民の関心の高いものです」と次のように挨拶。「続『矢野絢也さんより話を聞く会』は盛況のうちに終了した。

石井一民主党副代表
 (我々は)宗教団体が不当な介入を政治にするということだけはやめろ、宗教団体としての適格性を欠くことだけはやめろ、ということを言うとるんであって、それ以外に対して、別のことは何も言うてないのに関わらず、まともに腹を据えて戦う政治家が少ない。そして日本のマスコミがまさに堕落してしまってとるということをね、もう一度ここで強く大きく叫んでおきたいと思います。
 もし民主党政権ができたら、しっかりとこの問題は取り上げてまいります。100パーセントこれらと妥協することはありません。
 そうしていま問題になっておりますね、マスコミの報道に対しても、キッチリと物を言わせてもらいます。それから政治介入ということに対してもキッチリ物を言わせてもらいたい、いう風に思いますしね。
 そこで総選挙が近づいてまいりましたから申し上げますが、学会の施設を党が集会に使う。それなら会場費をとってもろうたかどうかちゅうのを、もっと調べなきゃいけません。そこにポスターを積んで貼りに回っとるというんであれば、その特典を受けた宗教施設を使用してるんでありますから、政治行動のために使っとるということでありますから、まあ、固定資産税をはじめ、特典の権限というものは、剥奪させていただかなきゃいけません。法治国家なんでありますから。

 間近に迫った解散総選挙の結果によっては、日本の政治と宗教の関係における積年の課題である創価学会・公明党問題が、本格的に審議されることになろう。そこでは創価学会の宗教法人としての公益性ならびに適格性が問われることは間違いない。

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』(かもがわ出版)など。

投稿者 Forum21 : 2009年07月14日 19:40

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