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2005-4-1

特集/「創価学会報道」の現場から

批判強める出版社系週刊誌
相次ぐ「創価学会特集」の背景

長谷川学 ジャーナリスト

 日増しに強まる創価学会の影響力

 出版社系週刊誌が創価学会への批判を強めている。
 創価学会の“天敵”とも言える週刊新潮を始め、このところ“学会物”を控えていた週刊文春が3月17日号から「創価学会『ニッポン洗脳』の不気味」という連続キャンペーンを展開。週刊現代も3月26日号で「創価学会エリート創価大学OB 30年の就職先」を掲載、週刊ポスト4月1日号も創価学会系タレントに焦点を絞った記事を載せている。
 ここにきて週刊誌が一斉に創価学会特集を組んだ背景としては、次のことが考えられる。
 まず前提として、故藤原弘達氏の著書『創価学会を斬る』の出版を妨害した1970年の「言論弾圧事件」当時と創価学会の体質がなんら変わっていないという事情がある。学会の秋谷栄之助会長が言論弾圧事件を、いまだに「宗教弾圧」と被害者として捉え、まったく反省していないところにも、それは明らかだろう。また創価学会に批判的なジャーナリストや脱会者に対し創価学会が「聖教新聞」などの学会系メディアを動員して罵倒したり、訴訟を連発して学会批判を押さえつけようとしているのも事実だ。
 が、そうした体質を持っているにもかかわらず、創価学会の影響力は日増しに強まる一方。政治面では、創価学会を支持母体とする公明党と自民党の連立政権は早や6年が経過、日本の政治の中枢に公明党がドッカリすわっている。自衛隊のイラク派遣も学会と公明党の支持があったればこそ。いまや学会と公明党抜きに日本の政治は動かない。
 社会的にも創価学会員が社会のあらゆる分野に進出、学会員が社会の枢要なポストを占め、学会が社会を支配するという創価学会の「総体革命」が着々と進行しているように見える。たとえば池田大作名誉会長が創設した創価大学の出身者が外務省に50人も入るなど、国や地方自治体、大手企業などあらゆる分野に創価大学OBが進出している。
 さらに文化面においても、NHK大河ドラマ「義経」の主役級の3人を学会系芸能人が占めているように、学会系芸能人のメディアへの露出がとみに増加。学会系芸能人を通じて、社会の学会アレルギーを希薄化させるという学会のソフト戦略が成果を収めつつあるようだ。
 これに加えて学会の後継者問題が新たに浮上してきた。巷間伝えられているように、最近、池田大作名誉会長の体調不良説が流布し、後継者として池田氏の長男の博正氏が注目されている。巨大宗教団体の後継者問題は社会の一大関心事である。
 ところが新聞・テレビは学会問題をまったく報じようとしない。学会から毎年、新聞・テレビに支払われる巨額の広告費や印刷費の“効果”とされる。で、もともと、新聞・テレビが報じない、もしくは報じられないことを伝える使命を持っている出版社系週刊誌が国民に学会の動向を伝えているのである。
 筆者は長年、週刊誌記者をし、フリージャーナリストとして独立後も、主に週刊誌をメーングラウンドに執筆活動を続けているが、数ある取材テーマのうち、創価学会問題は避けて通れないものと考えている。一宗教団体が国政を左右することに不健全性と危うさを感じるからだ。
 最近、週刊現代の依頼でNTTドコモ事件と創価大学OBの就職先の追跡取材をしたが、その過程でも同様の危うさを痛感した。
 NTTドコモ事件については本誌で繰り返し特集してきたので、いまさら説明の必要もないだろう。私が取材したのは本誌発行人でジャーナリストの乙骨正生氏と学会脱会者の福原由紀子さんに対する通話記録窃盗事件(ドコモ第2事件)だ。
 乙骨氏と福原さんがNTTドコモ関連会社元社員、嘉村英二(創価大学OB)に携帯電話の通話記録を引き出されたのは02年3月7日、8日、4月7日の3回。福原さんが私のインタビューに答えたところによると、嘉村が福原さんの通話記録に不正にアクセスした翌日の3月8日、福原さんは乙骨氏と新宿で会うことになっていた。本誌創刊号を乙骨氏から受け取るためだが、このとき福原さんに尾行がついていたのである。
 福原さんはこう話していた。
 「乙骨さんに言われて、振り返ると白い帽子にサングラス姿の30〜40代の男が2人、携帯で何か話しながら、カメラで私の写真をパチパチ撮っているんです。乙骨さんが“何をやっているんだ”と言うと、男たちは一時的に身を隠したが、雑誌を受け取って別れると、そのうちの1人が私を尾行してきたんです。フラッシュをパッパッ焚きながら、男はついて来ました。私は、振り返るのも恐ろしくて、目の前のドラッグストアに飛び込み、さらに駅近くのビルのトイレでコートを脱ぎ髪型も変えて出てきた。すると男は消えていました」
 執拗に写真を撮り、さら尾行するというのは単なる興味本位の行動ではない。相手を威嚇して恐怖を感じさせるのが目的だ。
 福原さんを尾行した男が1人だったことからすると、男たちは二手に分かれ、もう1人が乙骨氏を尾行した可能性もある。この男たちは福原さんと乙骨氏が会うことを事前につかんだ上で、尾行したのではないか。もしそうなら、男たちはどうやって福原さんらが新宿で会うことを知ったのだろう。
 福原さんも乙骨氏も、嘉村とはまったく面識がないという。ところが嘉村は、一度も面識もない福原さんと乙骨氏の携帯の通話記録に、なぜかアクセスし不正に情報を入手したのだ。嘉村は昨年12月、執行猶予付きの有罪判決を受けた。東京地裁の波多江裁判長は「被告は、個人的興味と言うがにわかに信じがたい」としながらも、嘉村の背後に見え隠れする創価学会の組織的関与の可能性について検証することもなく判決を下した。
 この事件については、今後も乙骨氏らが民事訴訟などを通じて真相に迫る努力を続けるというので、その行方を見守りたい。

 創価大学OBの進出で創価学会の王国を築く

 また創価大学OBの就職先の追跡取材の過程でも、気になることがいくつもあった。まず創価学会関連団体としての創価大学の位置づけに関してだが、1981年に創価学会が東京地検公判部に提出した内部資料によると、創価大学は学会の外郭団体の中で最も重要な団体の一つとして扱われている。
 「外郭法人(団体)について」という文書には「外郭の掌握を充分にするということを前提」に学会本部に「外郭担当本部長」を設置。また学会理事長、副会長と外郭団体、会社の代表、社長の「トップ会議」を毎月1回行い、連携を強化すると書いてある。また資料によると、トップ会議には公明党の総務局次長の名前も記されており、政教一致と批判されても仕方のない内容だ。
 しかも資料には「監査体制」として「表には出さないが外郭監査委員会を設け、本部長を委員長にして、八尋、宮林、大野、中村、大曽根、森川がその下で仕事の内容をチェックする」と書かれているのだ。
 繰り返すが、これは学会側が自ら地検に提出した資料である。これではいくら創価大学側が「学会とは別の学校法人で主体的、自立的に運営されている」と言っても、説得力に欠けるのではないか。
 ところで私の追跡取材によると、創価大学OBは学会本部、公明党、聖教新聞、同販売店に千人以上が就職。このうち学会本部に入ったOBには、池田名誉会長の次男=故・城久氏の“御学友グループ”の正木正明副会長のように、学会の大幹部に出世している者が多い。正木氏は現在、創価大学の理事を務める。ちなみに池田氏の後継者と目される池田博正氏も同じ創価大学の理事だ。
 学会は、社会の枢要なポストを学会員が占めることにより、学会が社会を支配する総体革命を目指しているとされる。そのための人材供給機関が創価大学であり、さらには池田氏三男の池田尊弘氏が理事を務める創価学園ということなのだろう。
 また創価大学は外務省に50人、東京三菱銀行(70人)などの大企業にも多くの卒業生を送り込んでいる。地方公務員の数も驚くほど多く、都道府県と市区町村の職員は1100人を超えている。教職員数(創価大学と創価学園以外)も2200人弱で、その多くが公立学校に勤務している。
 創価大学の元教授の1人によると、かつて池田氏は同大教職員を前に、こんなことを話していたという。
 「将来、この大学の卒業生があらゆるところに進出して、創価学会の王国を築くであろう」
 巨大宗教団体・創価学会への監視を今後も続けていきたいと思う。(文中・一部敬称略)

長谷川学(はせがわ・まなぶ)フリージャーナリスト。1956年生まれ。早稲田大学卒。週刊誌記者を経てフリージャーナリストに。週刊誌、月刊誌を中心に政治、軍事、医療など多方面の取材、執筆活動を展開。著書に『政治家の病気と死』(かや書房)『病院の不思議』(ベネッセコーポレーション)などがある。

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