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2004-8-15
特集/日本を席巻する創価学会マネー
宗教法人・創価王国の収益力

段 勲(ジャーナリスト)


 「非課税」の恩恵で築いた巨万の冨

 経済専門誌「週刊ダイヤモンド」(8月7日号)が特集した「創価学会の経済力」が、経済界に予想外の波紋を投げかけている。
 ふだん、優良企業の応接室などに置かれている経済専門誌が、抹香臭い宗教問題などをまともに報じることは皆無に近い。それがなんと、20ページを超える誌面を費やした異例の大特集である。
 老舗の経済専門誌だけあって、むろん特集の焦点は、「経済力」に絞られていたが、大手情報サービス産業に勤める中間管理職のA氏がこう語る。
 「8月はじめ、“おい、『ダイヤモンド』読んだか”が、業界仲間の合言葉になりました。そう言う私も、週刊ダイヤモンドはいつも会社で読んでいるのですが、今回ばかりは身銭で購入しましたよ。それにしても、さすが学会の蓄財術ぶりは圧巻ですね。」
 経済専門誌に、滅多に見られない学会記事が掲載されたことで、企業戦士たちも大いに注目したらしい。
 一枚岩、あるいは鉄の結束との評価を得てきた創価学会。その公称信者数、800万世帯の組織がパワー全開すると、選挙戦でも自民党を頭から食いつぶすほどの力量を発揮する。
 推定、「10兆円」(95年11月7日、「宗教法人に関する特別委員会」での自民党衆院議員による質問から)とも言われる巨額な資産を形成するにいたったのも、こうした強力な組織パワーの反映だ。
 加えてもう1点。営利を目的としない宗教法人が、巨万の富を築いた背景には、非課税(収益事業部門は軽減税率)という恩恵もあったからである。
 一般企業なら、1千億円の収益を計上しても、税金で半分ほどは消えてなくなる。ところが宗教法人は、信者から1千億、2千億円を集めようとも、丸ごと収入。信者の2文字を寄せたら儲けという字になるが、しかも、それを銀行に預けて金利を稼いだり、あるいはどう使おうと信者に公開する義務もない。
 とくに創価学会の場合、キリスト教関係や天理教などの宗教法人と相違して、資金収支などは一切公開しない。そのため、同会の台所部分は深い霧に包まれているが、「収入部門」を見ると、大きく次の3項目に分けることができる。
 まず、毎年12月、恒例になっている「財務納金」(浄財)がそうで、これが宗教法人の本来の事業に相当する「一般会計」に当たる。
 戦後まもなく、「会員から一銭の寄付金も集めない」と公言し続けてきた同会が、「特別財務」とか「広布基金」の名目で、盛んにカネを集めるようになるのは1970年代後半からである。それが今日の「財務」納金として、組織の行事に定着した時期は77年頃からである。
 元最高幹部たちの証言によれば、例年の財務総額は当初、200億、300億円といった金額で推移していたようだ。
 一宗教法人が1年間で、信者から集める金が200億円でも圧倒される。だが、まだ驚いてはいられない。同会にもバブル時代が到来したのか、財務の集金総額が年を追って上昇し、80年代後半頃から1000億円を超える大台に乗ったといわれた。
 昭和から平成に移ると、「財務納金」制度もさらに充実。納金の会場が、これまでの全国に点在する会館や幹部宅ではなく、NHK受信料や水道、電気の支払いと同様に、銀行振り込み方式に変えられたのだ。
 「……振込み期間の最終日並びにその前日は、大変混雑しますのでなるべくお早めにお振込みください」
 と、丁寧な注意書きが印刷された財務納金専用の「銀行振込用紙」なども作成された。
 学会の財務振り込みを受けて立つ全国の各金融機関も、“特別ボーナス預金”の流入として大歓迎。しかし、地方の金融機関にとっては、せっかくの財務振り込みも一過性の現金滞留にすぎない。
 例年、時によって、総選挙が年末などに実施されると、12月恒例の財務納金日が前倒しになるケースがあった。しかしそれにしても毎年、3万人強の自殺者を記録しているこの混迷・波乱の不況のご時世に、1000億円台ものカネが集まるのか。

 金集めも「戦い」と位置づけて競わせる

 財務納金に関する同会の内部資料などを見ると、こうした財務集めも選挙活動と同じく、組織を挙げた「戦い」と位置づけている。
 都道府県下に、網の目のように張り巡らせた地域組織同士による、納金額の競い合い。某県某市内に住む会員が、地元の金融機関に振り込んだある年の「財務納金一覧」を入手したことがある。
 組織名、名前、組織役職、職業、金額が明記された1枚の用紙を見て息を飲んだ。なんの変哲もない地方の市に住む会員たちが、2000万円、1000万円クラスの納金を筆頭に、100万、50万円といった納金額が、ズラリと並んでいたからである。
 創価学会の収益は、毎年こうして集まる「財務」が大黒柱で、これが本来の事業として一般会計に入る。
 次いで、収益部門の大きさからいうと、公称発行部数550万部といわれる「聖教新聞」など機関紙類等出版物の収益、いわゆる「収益事業会計」である。
 会員たちが納金する先の「財務」と違い、法人税は課税されるが、宗教法人の収益事業は周知のように軽減税率だ。
 筆者は同会の収益事業部門である法人申告所得を、過去30年前にまでさかのぼって調べたことがある。60年代後半から70年初頭にかけては50億円台であったが、74年から80億円台になり、以後例年100億円前後で推移していた。が、ここ3、4年はほぼ順調な上昇気流にある。
 日々、池田大作名誉会長の賞賛記事で埋められている「聖教新聞」の発行部数が、伸びているのだろうか。
 同会による2003年の法人申告所得は、181億円。法人別の順位では、宗教法人のなかではもちろんトップ(ちなみに2位は明治神宮の16億8700万円)である。
 「週刊ダイヤモンド別冊」(日本の会社ベスト7万1076社・2004年版)によると、学会の法人所得の順位は170位。この法人所得の金額は、「イトーヨーカ堂」(186億円)や「KDDI」(189億円)に匹敵する。
 リストラしながら1円、2円の利幅を競う過酷なビジネス努力をして、186億円の申告を出したスーパーマーケットのイトーヨーカ堂。対して、1000億円を上回る浄財を得てなお非課税に恵まれ、その上、軽減税率という日本の税法に守られた巨大教団・学会の収益事業。国は守る相手を間違えてはいないか。
 学会、3番目の収益は「墓苑公益事業会計」である。北海道から九州まで、全国に点在する13カ所、約44万基の墓苑経営がそうだ。
 77年10月、1基約40万5000円(北海道・厚田、4万4千基)の販売価格からスタートした学会の墓苑事業。静岡、群馬、兵庫、三重、宮城と相次ぎ巨大墓苑をオープンさせたが、91年、墓石の販売収入などをめぐり、30億円に近い修正申告をするというケチがついた。
 だが、墓苑の販売は全国いずれも完売。その総額は、推定で、3000億円といったところか。巨大教団の収益は国の税法に温かく守られながら、膨張し続ける一方である。

段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。近著の『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『鍵師の仕事』(小学館)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)など著書多数。

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