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2003年8月1日号

特集/呪詛と怨念―創価学会の深層
“ワラ人形に五寸釘”を彷彿 「悪人撲滅御祈念」のおぞましさ

ジャーナリスト 段 勲

学会員の仏壇に「あなたの名前」が

 都内に住む知人のサラリーマン、A氏の夫人は、一人住まいの老人を対象にしたボランティア活動に参加している。
 何か社会の役に立ちたいという純粋な気持ちの活動参加で、ちなみにA夫妻は、いかなる宗教団体や政党にも属していない。家庭では二児の母親でもあるごく普通の市井人だ。
 暇を作って、寝たきりや身体の不自由な老人の話し相手を務め、あるいは身の回りの世話をするという介護に近いボランティア活動である。わずかの金をめぐって実の親子が殺し合う時代。年老いた他人の面倒など、なかなか真似の出来ない行為である。
 最近、そのA夫婦にお会いした際に、こんな話をしてくれた。
 「この間、家内が訪問した老人宅の仏壇に、あなたの名前が飾ってあったのを見てビックリしたという。家内の話を聞いて、およその検討はついたが、あの宗教団体はそんなことまでやっているのか?」
 唐突な質問であったが、すぐに察しがついた。学会の所業である。だが、返答する前に、一応、目撃した現場の状況を聞いてみた。
 今年の春先、A氏夫人がボランティア活動の一貫として、足の不自由な老婦人が住む一人住まいの団地を初訪問した。部屋に入ると、かすかな線香の匂いと共に、圧倒されるような立派な仏壇が目を引いた。
 天井まで届くような漆塗りの仏壇の脇には、額縁に入った池田大作・創価学会名誉会長の写真が飾られていたことから、創価学会員であることが解ったらしい。
 老婦人と会話を交わしながら、何げなく観音開きの仏壇の中に目を移すと、
 「『御祈念 池田先生、奥様の御健康と御長寿』と印刷された用紙の他、また別なB5版ほどの紙には、あなたなど数人の名前が印刷されていた。その紙にはさらに『悪人撲滅祈念』と書かれていた」
 と、いうのである。
 くだんのA氏夫人は、偶然もさることながら、仏壇などという思いもかけない場所で知人の名前を発見。複雑なショックを受けながらも、
 「この人達はどのような悪いことをした人たちですか」
 と、老婦人に尋ねると、ただ、
 「とっても悪い人だ」
 と、応えたという。
 一部(あるいは全部か?)の創価学会員が、筆者などの名前を印刷した用紙を仏壇に置いていることは、複数の人たちから聞いて知っていた。
 選挙に入ると学会員が、公明党議員の立候補者名を書き、仏壇に納めて「祈念 当選」を祈るあの手法である。しかし、筆者は立候補者ではない。
 学会員が朝夕のお勤め時に、昔のホラー映画に出てくるまるで“ワラ人形に五寸釘”を彷彿するような「撲滅ご祈念」をしている行動は、実はいまに始まったことではない。もう、かなり早い時期からのようである。
 筆者自身、学会からこれまで直接的な被害も随分受けてきた。駅前で、慣れない手つきでカメラを構える婦人部と直面して、むしろ相手に哀れさを感じたこともある。筆者の写真など撮ったところで、一体、何になるのだろうと思うが、これが学会特有の体質と思えば理解しやすい。
 それにしても巨大組織・学会が、宿敵・日本共産党や、世界に転じて、イスラム教、キリスト教などを敵に回した撲滅祈念ならまだ解る。それを筆者などコモノまでが撲滅祈願の対象にされるなど、少しばかり気恥ずかしい思いがしないわけでもいない。
 でも、事実、人を撲滅させるために、80歳を越える老人まで巻き込み、朝夕祈念させるという宗教団体。世間ではこうした宗教を、カルト教団とは言わないか。宗教の崇高性や尊厳さなど、微塵も感じられないからである。  
 A夫人が口を開く。
 「私たちなどは宗教などにほとんど無関心だけど、なぜ、こういうことになるの。もし、これが宗教の活動というなら、理解ができない。私が訪問した80歳を過ぎたおばあちゃんは、心優しい人のようで、見知らぬ他人を撲滅するために、朝夕、自ら祈念しているとはとても思えません。実際、用紙は印刷されていて、名前を書いたのも本人ではないでしょうし、ただ、上からの命令でやっているのでしょうね。毎日、仏壇の前に座って、恨みごとを祈念するなら、残り少ない生涯の自分の健康を祈念してはどうかしら。自分か他人の幸せのために祈るような宗教ならまだしも、撲滅など、人が早く不幸になるように祈りなさいなど、これでよく宗教団体などと名乗っていられるわね」

 どちらが創価学会の本当の姿?

 主人のA氏が、夫人の話を遮って言葉をつないだ。
 「ときどき、一般紙で池田大作氏の著書広告を見ることがある。世界平和だ、文明の西東だ、生命を語るの、未来、宇宙、人間がどうのと。タイトルだけ見ても実に高尚な哲理の言及で、読んだこともないが、書いている中身はたぶん素晴らしいのでしょう。そんな世界を向いて言論を発している大指導者がいる宗教団体の会員たちが、組織をあげて朝晩、仏壇に座り、相手の名前まで書いて不幸に堕ちてくれと祈願しているとは、滑稽きわまりない。どちらが本当の姿なのでしょうね。もし池田氏のように世界平和を願うなら、公明党と一緒に会員たちも、サダム・フセインの撲滅でも祈ったほうがはるかにすっきりするのではないか」
 人の撲滅を祈念する宗教もどうかと思うが、かつて、北海道・札幌市内で筆者自身、こんな異様な現場を目撃したことがある。
 学会と宗門が離反した平成3年以降のこと。地元学会員がよく集まる集会場の階段に、宗門のトップや地元末寺住職の名前が書かれた用紙が1段、1段に貼られていた。
 2階の集会場に行くのに、集会参加者たちは、その名前を足で踏んづけながら昇っていくのである。人権を侵害するこんな非常識な組織行為はほんの一例で、もっと凄まじいこの種の話も聞いているが、今回は割愛。
 話を戻そう。A氏夫妻がショックを受けたという「祈祷用紙」は、地域によってサイズや表現方法も違うようだ。筆者の手元にあるその1枚をあらためて紹介してみよう。埼玉県下で入手した用紙にはこう書いてある。

悪人撲滅御祈念

日顕・山友・竹入 
能安寺・水島公正 
藤原行正 
乙骨正生 
段勲 
福島和子
後呂雅巳

 本誌の読者諸兄には説明を要しないと思うが、日顕とは、日蓮正宗の67世・阿部日顕法主のこと。学会から見たら、目下の極悪人・ナンバーワンである。
 以下、能安寺・水島公正(日蓮正宗、埼玉県末寺の住職)、山友(山崎正友・元創価学会顧問弁護士)、竹入(竹入義勝・元公明党委員長)、藤原行正(元公明党都議会議員)、乙骨正生(本誌発行人)、福島和子(元創価学会副会長・福島源次郎氏の夫人)、後呂雅巳(地域学会組織の元古参幹部)である。
 ここに登場している大半の人たちは、「聖教新聞」等、学会の機関紙で、来る日も来る日も、“人間以下”並に報じられ、
 「大悩乱」「毒蛇」「はきだめ」「詐欺師」「鬼畜」「ケダモノ」「極悪ペテン師」「デマ坊主」「金狂い 女狂い」……といった、これ以上の悪態もない罵詈雑言にさらされている人々だ。
 発行部数、550万部の機関紙紙上で学会組織の最高幹部たちがこのような発言をし、毎朝、会員の自宅に届けられている。
 連日、薄汚い言葉を浴びせられている人にも家族がおり、親戚、知人だって少なくない。聖教新聞に「人間」がいるのだろうか。
 ごく最近になって元顧問弁護士の山崎氏が、聖教新聞などを「名誉毀損」で訴える動きに出た。資料収集など準備に余念がないが、はたして裁判所は、悪人撲滅御祈念というこうした学会の体質をどう裁くのか。

写真キャプション
埼玉県の創価学会組織で配布された「悪人撲滅御祈念」表

段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。近著の『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『鍵師の仕事』(小学館)『宗教か詐欺か』(リム出版)など著書多数。

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