特報/拡大版・創価学会関連裁判報告
「フォーラム・乙骨」が創価学会に勝訴 本誌編集部

「フォーラム21」損害賠償等請求事件
●平成十四年十二月十八日午後一時十分 判決公判

 「フォーラム21」五月一日号掲載の「宗教界トピックス」の記事が名誉毀損にあたるとして、創価学会が一千万円の損害賠償と謝罪広告を求めて提訴していた事件の判決公判が、平成十四年十二月十八日午後一時十分より東京地裁六一一号法廷で行われ、東京地裁民事三十九部(菅野博之裁判長)は、原告・創価学会の請求を棄却。被告の有限会社フォーラムならびに乙骨正生勝訴の判決を言い渡した。
 同訴訟で問題となった「フォーラム21」の五月一日号に掲載された「宗教界トピックス 立教開宗七五〇年の佳節に身延山・奥の院の前別当が脱税」と題する記事は、東京国税局が、平成十四年三月二十八日に日蓮宗の総本山久遠寺の奥の院である七面山敬慎院の前別当である中里悠光氏が三年間で一億二千万円を脱税していたとして、甲府地検に告発した事件について事件の概要と背景を解説。その最後の部分で「その背景に創価学会の動きがあるとの指摘もある」と記した上で、「こうした見方が真実かどうかはわからない」としながらも、脱税摘発の背景には創価学会が対立する立正佼成会や霊友会(久保派)、日蓮宗などの会計に問題がないかどうか探ろうとすることを目的に仕掛けたのではないかとの見方があるとの「宗教関係者」の発言を紹介。併せて「以前、『週刊文春』でも報じられたように、国税局の職員の中にも学会員はいる。またいまや公明党は政権与党であり、国税に圧力をかけることも可能だ」とその可能性について言及したもの。
 これに対して創価学会は、「(本件記事の各問題部分は)今回の七面山の脱税事件は、原告が、対立する宗教法人である立正佼成会や霊友会(久保派)の会計に問題がないか否かを不当な手段で把握し、攻撃材料を得て攪乱するか、ないしは、日蓮宗にダメージを与えるなどの不当な目的のために、敬慎院の乱脈経理問題を手がかりに、原告の会員である国税局職員を使ったり、政権与党の一角を担う公明党を使って国税当局に不当に圧力をかけるなどして、国税当局による査察・告発を仕掛けたものであるとの事実を摘示し、もって、原告の社会的評価を著しく低下させたものであるから、原告の名誉を著しく毀損するものである」として、有限会社フォーラムとフォーラムの代表取締役で「フォーラム21」の発行人である乙骨正生に対して、一千万円の損害賠償の支払いと、「フォーラム21」に創価学会に対する謝罪文を掲載するよう求めていた。
 これに対して乙骨は、「本件訴訟は、およそ名誉が毀損されたとは言い難いささいな言辞を取り出して、原告が被告の言辞を封じ込め、自己の機関紙に大々的に宣伝して会員・読者を反乙骨の体制に洗脳するために行う訴え提起であり、濫訴である。本案に入る前に、訴えの利益があるか否かが厳正に判断されるべきである」として、創価学会の乙骨に対する相次ぐ名誉毀損に基づく損害賠償等請求訴訟は、創価学会が自らにとって批判的な言論を行っている乙骨の言論活動を封じ込めるための謀略的な濫訴であること。
 また「本件『FORUM21』の記事内容は、七面山敬慎院前別当の中里氏の脱税事件についての内容を解説を交えて伝えたものであり、創価学会が問題とする部分は、国税局の査察と告発の背景として末尾の部分で言及したにとどまり、原告を主たるターゲットとして書かれたものではない」こと。
 また、創価学会が名誉毀損にあたるとしている各問題部分についても、
 「文字通り『指摘もある』と書かれただけで名誉毀損に該当するような表現内容ではない」
 「宗教関係者から取材したものとして、引用部分として紹介されているだけであり、このような取材内容を公表したからといって、不法行為を行ったことにはならない」
 「原告が他宗派の金の流れに手を突っ込むことを仕掛けたり、他宗派の会計に問題がないかどうかを探ったとしても、その事実を指摘されたからといって、名誉毀損にはあたらない」
 「国税局の職員の中に学会員がいることは原告の名誉毀損には当たらないし、公明党が政権与党である以上、国税局に圧力をかけることも可能であるということも、表現のとおりである」
 などと主張。「フォーラム21」五月一日号掲載の「宗教トピックス」は、名誉毀損にはあたらないと主張していた。
 これに対して裁判所は、創価学会の提訴は「濫訴」だとする乙骨の主張は認めなかったものの、創価学会が名誉毀損にあたるとする各問題部分は、「そもそも本件記事全体に占める位置づけが低い上に、それ自体一般論を前提として、格別の根拠もなく具体性をも欠く抽象的な内容を控えめに表現したものにすぎないものであって」「一般人がこのような記事を読んだとしても、原告の社会的評価が殊更低下するとは考えられ(ない)」として、原告の請求を棄却。フォーラム・乙骨勝訴の判決を言い渡した。
 ちなみに、これまで創価学会は、「聖教新聞」や「第三文明」などの機関紙誌等において、「フォーラム21」五月一日号掲載記事を創価学会が提訴したことをもって、乙骨を激しく誹謗する記事を繰り返し、繰り返し掲載してきた。
 例えば十一月十五日付「聖教新聞」掲載の「正義と真実の声22」は「デマ事件だらけの"妄想狂"乙骨 "身延の脱税事件に学会が関係"と大ウソ」との見出しのもと、次のように乙骨を誹謗している。
 「――あの『ガセネタ屋』乙骨が、身延の坊主の脱税事件に絡んで学会を中傷した。(中略)
 迫本(青年部長)"創価学会が仕掛けた"だの"学会が立正佼成会や霊友会の会計に手を突っ込む""学会が日蓮宗にダメージを与えるためにやった"だの『見てきたようなウソ八百』を並べていた。
 ――そのうえで、あたかも学会が国税局をけしかけて、脱税事件の告発に関わったかのようなデマを流していた。  迫本 バカバカしい。"妄想狂"の悪辣極まりないデマだ。  どこに、そんな証拠があるんだ?誰が見たんだ?誰に、そんなデタラメを取材したんだ?『学会がやった』と言うのなら、その証拠を、耳を揃えてハッキリ出してみろ!  ――だいたい国税局が迷惑だ(笑い)。
 迫本 その通りだ。乙骨は学会だけでなく、日本の国税局も侮辱したんだ。関係者も、さぞ激怒しているだろう。(中略)
 ――しかし、いくら何も書くことがないからといって、ここまで支離滅裂なデマをデッチ上げる恥知らずがいるとは。到底、信じられない話だ。
 迫本 だから『ガセネタ屋』と言われるんだ。この事件については今、裁判所で審理が進んでいる。乙骨のデマが厳しく糾弾されていくことは間違いないだろう」
 また、創価学会の外郭(直営)出版社である第三文明社発行の雑誌「第三文明」の平成十五年一月号掲載の「連載 マスコミ界に寄生する乙骨正生の正体」「第4回 またもや断罪された『ガセネタ屋』」には次のようにあった。
 「乙骨本人もいま、合計三件の名誉毀損訴訟を抱えている。(中略)
 (3)『身延の僧侶の脱税摘発に学会が関与』云々のデマ記事事件――である。
 このうち『身延』デマ事件の二回目の口頭弁論が十一月六日に東京地裁で行われた。ところが、である。開廷からわずか二十分ほどで、裁判長が裁判の終結を告げたのである。
 それもそのはず。乙骨側は『名誉は毀損していない』と強弁するばかりで、通常の名誉毀損訴訟で最も重要な争点となる『記事の真実性、相当性』に関しては、何の立証も行おうとしなかったからである。
 乙骨は『北海道の墓苑』をめぐるデマ事件でも、これと同じ無謀な『戦法』で敗訴したばかり。記事もデタラメなら、訴訟態度もデタラメというわけか。
 判決言い渡し予定日は十二月八日。これに敗訴すれば、わずか一年の間に三度の断罪を受けることになる。もはや間違いなく『日本一のデマ男』であろう」  同事件についてここまで言及していた創価学会だが、判決翌日の十二月十九日付「聖教新聞」には、同訴訟の判決についての記事は一行も掲載されていなかった。
 以下に参考までに東京地裁判決における「裁判所の判断」部分を掲載する。  
 本件記事は、全体として身延山久遠寺奥の院七面山敬慎院の前別当である中里の脱税事件について、その背景や周辺事情等を解説することをその主旨とするものであり、本件各問題部分は、本件記事全体の中においては上記脱税事件発覚の背景事情の一つとして説明されているに過ぎないものと認めるのが相当である。
 さらに、原告(創価学会)の指摘する本件各問題部分についてより詳しく検討してみても、本件各問題部分の内容は、要するに、前記脱税事件の背景事情の一つとして、国税局の職員に原告の会員がいることや、政権与党である公明党が国税局に圧力をかけることも可能であるというような事情をいわば前提として(問題部分4)、原告が他の宗教法人の会計上の問題を探ったり、ダメージを与えるという目的のために、本件脱税事件の発覚を「仕掛けた」との見方もあることを紹介しているものにすぎないと認められる(問題部分1ないし3)。
 しかし、原告が多数の会員を擁する宗教団体であり、また公明党が政権与党であるという、いわば公知の事実に照らし合わせて考えると、国税当局に原告の職員がいることや、公明党が国税当局に圧力をかけることも可能であると指摘すること自体(問題部分4)は、本件各問題部分程度の抽象的表現に止まっている限りは、読み手の立場からすれば、単なる一般論以上の意味を有するものではなく、このような記述が原告の社会的評価を低下させるものとは到底認められない。
 なお、宗教団体ないし宗教者の巨額脱税が悪質な犯罪であることはいうまでもないところであるから、その調査をしたり、告発したりすること自体を非難することはできず、また、仮に、政党がそのような調査、告発をしたり、あるいは、国税当局に対して、嫌疑を通知し、調査を促したとしても、必ずしもそれを直ちに非難することはできない。もちろん、真実には脱税の事実等がないことを知りながら、不当な目的で国税当局に不正な圧力をかけることは許されないところであるが、本件記事には、このような具体的記述は何ら含まれていない。
 また、原告が上記脱税事件の発覚を仕掛けたという見方(問題部分1ないし3)については、「宗教関係者」の発言を紹介する記述となっているが、その発言内容自体についていえば、原告が脱税の発覚等を「仕掛けた」手段、方法、過程等について何らの具体的な事実の指摘を伴っておらず、単に原告と立正佼成会や霊友会(久保派)との対立関係の存在や、前述のとおり一般論以上の意味を持たない問題部分4の記述のみを前提として、原告にはそのようなことを仕掛ける動機と可能性があるといった程度の抽象的なことを述べたものにすぎない。また、その表現方法についても、問題部分3においては「………の会計に問題がないか探ろうとした気配がある」とされていたり、当該紹介部分に続く問題部分4の冒頭に、「こうした見方が真実かどうかは分からない」と記述されているなど、全体的に断定的ではない控えめなものである。さらに、発言者は単なる「宗教関係者」とされていて、その立場や身分が全く明らかでなく、発言者が原告と本件の脱税事件の摘発との関係を特別に知り得る立場にあることを示すような何らの事情も摘示されていない。
 以上によれば、本件各問題部分は、そもそも本件記事全体に占める位置づけが低い上に、それ自体一般論を前提として、格別の根拠もなく具体性をも欠く抽象的な内容を控えめに表現したものにすぎないものであって、このような記事を書かれた原告において主観的に被害感情を抱くのはともかくとして、一般人がこのような記事を読んだとしても、原告の社会的評価が殊更低下するとは考えられず、他に上記低下を認めるに足りる証拠はない。したがって、本件各問題部分が原告の名誉を毀損したと認めることはできない。
 以上述べたように、本件各問題部分が原告の名誉を毀損するものであるという主張には理由がないから、その余の主張について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも認めることができない。

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